石油ネット業界事情の「今」を見つめる 石油ネット

 政治・石油業界を含む経済、各種市場などのテーマを独自の視点から分析・解説します。

―世相斬り−

キング

第 11 回

空前の円高続く 為替介入より資源確保に強い円を使え

世界経済の先行きを不安視する声がマーケットを中心に顕著になってきた。ギリシャ、イタリア、スペインなどユーロ圏の一部で財政危機の慢性化が懸念されている。一方、アメリカでも財政赤字拡大、景気後退といった三年前のサブプライムローン破綻後の、過度な景気対策や金融緩和のツケが回ってきた。さらに、米国格付け会社SP社がアメリカ国債を一段階格下げという悪条件も加わり、各国の株式市場は乱高下しており、株式や各国の通貨に対する信頼が低下している。


こうした世界経済の悪化は、EU諸国の財政健全化、アメリカの景気回復という簡単に解決できない問題が根底にあり、各国通貨の中で消去法により日本の円が買われ、8月10日に1ドル76円前半の水準を示し、史上最高値に迫る勢いだった。この円高傾向は長期化するとの見方が支配的で、今後、日本政府の対応が注目される。先頃、政府は莫大な資金を投じて、為替介入を実施したが、効果は限定的だった。為替介入はアメリカなどの主要国と連携して協調介入を実施すれば、それなりの効果は期待できるが、今回のように日本の単独介入では、大きな池に目薬を差す程度と揶揄されてしまうほど効果は期待できない。


今回の為替介入は経団連をはじめ、輸出企業の要望に応えたと思われるが、政府が莫大な資金を投じて円高抑制のため、為替介入を行う姿勢には疑問を感じる。過度の円高が輸出企業にとって多大な不利益を被る、というメカニズムは理解できる。しかし、巨額の資金を投じて介入しても、為替相場は日本政府の思惑通りにならないのも事実。為替介入に使う資金も国民の税金である。従って、政府は視点を変えて、将来の国や国民のために、円高のメリットを最大限に活用する方向性を視野に入れるべきだ。


 国内では少子化による人口減少が問題視されているが、世界的には人口の増加と近未来の食糧不足が懸念されている。食糧自給率の低い日本は、この円高時に食糧あるいは食糧の源になる土地を確保すべきだ。さらに、将来のエネルギー確保は日本にとって最も重要な課題であり、この円高が続いている時期にエネルギー確保のため、より積極的な投資を実践すべきだ。こうした資源確保をする日本の姿勢をみた諸外国は、行き過ぎた円高に対し、警戒感を強めるとともに、円高に歯止めをかける機運が高まる可能性も十分にある。


 今後、政府は輸出企業の利のために為替介入を行うばかりでなく、日本国の将来のために資源確保に貴重な資金を使うことも必要だ。自国の通貨が安くなり崩壊した国々はあるが、通貨高によって崩壊した国は歴史的にも例がない。


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