政治・石油業界を含む経済、各種市場などのテーマを独自の視点から分析・解説します。

―世相斬り−

キング

第 3 回

忘れかけた脱官僚を思い出せ

 

中国との尖閣諸島周辺での領土問題、ロシアとの北方領土問題など菅内閣の外交上の不手際が目立った。国内でも閣僚の不適切な発言による大臣の辞任。仙石官房長官らの問責決議案の参議院での可決などが原因で、各種世論調査の内閣支持率は軒並み20%台と低迷した。追い込まれた菅内閣は、ここにきてようやく法人税の5%削減など、いわゆる菅カラーを前面に押し出してきた。

 

外交や国内の経済問題の是非はそれぞれの道の専門家に任せるとして、ここでは昨年の衆議院選挙で劇的な政権交代が実現した時、筆者を含む多くの国民は「これで世の中が変わる」と期待した事に焦点を当てたい。当時、「コンクリートから人へ」「脱官僚政治」といったスローガンを素直に受け止め、一部の業界や企業しか恩恵を受けない公共事業から脱却し、農家の個別保障制度、子供手当、高速道路の無料化、ガソリン税の廃止など直接的に国民に還元するシステムに変わると思っていた。また政治主導が進み、官僚の人員削減、年俸の大幅カット、天下りの根絶、などが当然のことながら実践されると信じていた。しかし、現実は我々が期待した政策とは程遠い残念な結果となった。さらに現政権が樹立してからは、官僚が水面下で描いた政策を代理で行い、天下りの根絶どころか現役出向まで認め、官僚の人員削減の話は立ち消え、年俸についても人事院が定めた微減の水準を受け入れた。

 

政権交代時、民主党に対し政策で期待したことは前述した通りだが、国民はその政策を実現する民主党全ての国会議員にそれぞれの選挙区で一票を投じたはずだ。現執行部に対してだけ政権を任せたわけではない。支持率が下がると、「政倫審で説明すべきだ」と同党の小沢さんを「いけにえ」する構図で、支持率回復を企む手法に違和感を覚える。同じ小沢さんの利用方法でも、あれだけ官僚が恐れ、既得権益を堅持しようとしている輩を叩きのめせる資質を持った政治家をより有効に活用すべきだ。話は脱線するが、CS放送朝日ニュースターのパックインジャーナルでMCを務める愛川欽也さんも同様な主張をしていた。地上波メディアに期待できない昨今、CSとはいえテレビ放送で筆者と同じような考え方を発信する番組がある事に安心した。パックインジャーナルは数ある政治、経済を扱う番組の中で、国民が決して忘れてはいけないテーマを再認識させ、地上波にはない切り口で進行する貴重な番組だ。

 

民主党の内紛に話を戻すと、脱小沢という事ではなく、政権交代時にマニフェストで約束した事を全てとは言わないが、忠実に実践できる新執行部を発足させるべきだ。少なくとも官僚が水面下で暗躍できる環境を許させた現執行部より、はるかに信頼できるのではないか。迅速に方針転換をしない限り、菅内閣の崩壊は勿論、近い将来、民主党が壊滅的な打撃を受けるだろう。一部の閲覧者からは小沢さんを援護しすぎだ、とお叱りを受けるかもしれないが、検察審査会で取り上げられている事が白でも黒でも、今後の日本を左右するような大きな問題ではない。まして政倫審でこの問題を扱うのは、日本が置かれている状況を勘案すると時間の無駄にしか思えない。

 

小沢問題、尖閣諸島や北方領土の問題の陰で、心ない一部官僚の思惑が、ゾンビのように復活する事を阻止するのが、本来の政治やメディアの使命だ。「経済の立て直しを最優先する」という理論は正しいが、日本に限らず先進国の景気低迷は、政権与党の交代や政治家の顔ぶれを代えただけで復活するほど簡単なものではない。今後、国家財政を健全化するため、何らかの形で国民に痛みを伴う政策が実施されるが、その前提条件として、バブル崩壊以降、日本国をダメにした主因である官僚機構にメスを入れ、国民に見える形で官僚組織が変わらなければ、既得権益から無縁な良識ある国民は決して納得しないだろう。忘れかけた「官僚政治の打破」を思い出させるような政治手法とメディアの報道に期待したい。

 

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