石油ネット業界事情の「今」を見つめる 石油ネット

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―世相斬り−

キング

第 5 回

ジャスミン革命と原油情勢

中東で発生したジャスミン革命(民主化運動)の流れが止まらない。チュニジアからエジプト、そしてリビアまで波及。現在、リビアでは各メディアで報道されているように、カダフィ大佐率いる現政権と反政府勢力との間で、内戦が繰り広げられている。エジプトのムバラク氏が退陣したような早期解決の道は閉ざされた。現政権は国民の支持もなく、軍隊も掌握できず、政権中枢にいたアブドルジャビル前司法書記までもが反旗を翻した。こうした状況にもかかわらず、カダフィ大佐は未だに自らが革命のリーダーと主張し。アフリカをはじめ各国から、一日2,000ドルという法外な報酬(平時は月2,000ドル)で傭兵を集め、自国民を殺戮している。今後、時間の問題でカダフィ政権が崩壊することが予想されるが、政党など存在しないリビアの国家の枠組みでは、無政府状態を含め戦後処理が長期化する懸念もある。


 これに伴い、世界の原油相場は高騰しており、先週、WTI(原油相場の指標)で一時的にバレル100ドルを超えるなど高値圏で推移。その他、ドバイ、北海ブレンドも高騰しており、昨年末の価格は90ドル前半の数値を示していたが、中東情勢の緊迫化に伴い上昇し、バレル110ドルを超えた水準で取引されている。


 今後の原油相場はどうなるのか?サウジアラビアが増産を表明しているが、一方でこの混乱に乗じて投機マネーが流入するとの見方もある。いずれにしろ、ジャスミン革命の流れがリビアでとどまるか、他の産油国に波及するかが焦点になり、先行きが不透明なうちは上昇傾向が続き、短期的に高値圏で推移することが予想される。

 その後は二つのシナリオが想定され、一部メディアで評論家が論じているように、民主化運動がバーレーン、サウジアラビアに波及した場合、原油相場はさらなる高値を模索するだろう。特にサウジアラビアからの原油の輸入量が圧倒的に多い日本は、国民生活を直撃し、もはや対岸の火事では済まされなくなる。

 
 もう一つのシナリオは、サウジアラビアは国民一人あたりのGDPも高く、他の中東諸国に比べ国民生活が裕福で安定しているため、民主化運動が波及しないという見方もある。隣国のバーレーンについては、混乱回避のためサウジアラビアが積極的な支援を行っている。産油国の思惑の根底には、原油を売りたいという本音もある。一連の中東情勢に対し、今のところアメリカは人道的支援を行いながら、民主化の行方を見守るスタンスをとっている。アメリカにしてみれば、イスラエルの問題や今まで中東諸国の独裁国家を黙認しながら、原油を確保してきた複雑な立場に置かれている。また、回復基調にあるアメリカ経済の情勢を勘案すると、極端な原油高は経済に多大な悪影響を及ぼす懸念もあり、中東情勢の早期安定に傾注すると思われる。従って、リビアの混乱が終息するとともに、原油相場は安定するという見方もある。

 
 どちらのシナリオになるとしても、混乱に乗じて投機マネーが流入し、実需以上の高値で相場が形成される事態は避けたい。原油価格の高騰は単に石油製品だけではなく、すべての流通コストを押し上げ、各国の国民生活に支障をきたす。

 
 ジャスミン革命の波及によって、今後、一番懸念されることは中国で、既に民主化運動の流れは中国国内へ飛び火しており、一般のメディアの報道では、公安当局が約千人の身柄を拘束したと伝えている。一部インターネットの情報では身柄を拘束されたのは約三千人とも伝えられている。世界経済をけん引している中国で中東と同様な内戦や混乱が発生した場合、アメリカ、日本だけではなく世界各国に甚大な悪影響を与えることは明白。今後、中東情勢に加え中国国内の状況を注視しなければならない。

 

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