石油ネット業界事情の「今」を見つめる 石油ネット

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―世相斬り−

キング

第 6 回

復興の足かせは、原発事故と東電の対応


 先月11日に東日本大震災が発生してから、あと数日で一か月が経過しようとしている。発生直後に比べ、被災者自身の忍耐と努力、自衛隊をはじめとした救援活動、各地方自治体の被災者の受け入れ態勢表明など、復興への道のりの第一歩を踏み出している。この間、極限の状況下におかれているにもかかわらず、決して秩序を乱さない被災者のモラルに対して海外メディアは称賛。国内はもとより世界各国からの義捐金や、心温まるメッセージ。

電力不足に対し東電管内で生活する個人、法人が節電を心掛け一定以上の成果をあげる−など、人として感動に値する出来事が数多くあった。


 こうした復興への道程に水を差しているのが福島第一原発の問題だ。事故直後、東電並びに政府の会見を見る限り、都合の良い展開を全面に押し出し、最悪の事態を国民に隠しているのでは?と疑問を感じた人も多かっただろう。それは日本国民だけではなく、外国の政府、海外メディアも同様の印象を受けたはずだ。現在、国内外で問題視されている放射線に関する風評被害が必要以上に拡大しているのは、初動の広報活動に対する不信感に起因していると考えてしまう。また、東電首脳陣が電力不足に関する会見を行った際、「電力不足を補う策として、電気代の値上げ」をほのめかす発言があったが、国民の感情を逆なでした愚かな言動ということを厳しく指摘したい。

 震災前まで東電、経産省、政府などは「原発の安全神話」を国民に対し洗脳していたが、いざ事故が発生すると、「想定外、未曽有の事態」という重みのない言葉で言い訳を繰り返した。それでも被災地で困難に直面している方々のことを思えば、節電や計画停電に何一つ文句を言うことなく協力している東電管内の国民、法人に対し失礼極まりない言動だ。電力の値上げを示唆する前に、東電役員の報酬削減はもちろんのこと役員の私有財産すべて、一般社員の所得削減を財源の一部として、一連の放射能漏れで直接的に被害を受けた方々、計画停電による経済活動が阻害された方々に対し補てんする、という趣旨の発表がないことに憤りを感じる。これに加え、東電と共に「虚偽の原子力安全神話」の片棒を担いだ官僚、政治家の罪は重い。


 巨大地震と津波の被害から復興に向け、多数の人々が惜しみない努力をしている。こうした中、復興に対する一番の阻害要因は原発事故と東電幹部の心無い対応だ。特に、農業、漁業といった食に関する産業の被害は甚大だ。東電並びに政府は直接的に放射能漏れによって、復興ができない産業に対し具体的な補てんを一日も早く提示し、これらの産業に携わる方々に安心を与えるべきだ。被災地以外でも放射能漏れによる、経済活動の停滞は顕著で、旅館業、行楽施設、レストランなどのレジャー産業は、国民の自粛ムードに追い打ちをかけるように外国人旅行者の激減で、事業の存続を危ぶむ声も出始めている。これら以外の産業についても、消費マインドの冷え込み、計画停電の実施によって莫大な被害を受けている。


 これだけの大惨事を招いたにもかかわらず、その後の東電の対応は深く反省をしているというよりも、原発事故の直接的な被害者や節電に協力している国民を愚ろうしているのでは?と思ってしまう。政府は東電が「民間会社だから」という枠組みを超え、事故の早期収拾と補てん問題に対し、より積極的に介入すべきだ。さらに今後の会見では、都合の良いことも悪いことも包み隠さず発表し、今後起きうる最悪の事態と、事態の収拾までに要する時間をできる限り明確にすべきだ。こうした正確な情報開示が国民に安心を与え、海外メディアを通じて世界各国に報道されることで、日本国の安全性をアピールしていくことが、経済活動の停滞に歯止めをかける第一歩になることを提案したい。

 

 

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