石油ネット業界事情の「今」を見つめる 石油ネット

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―世相斬り−

キング

第 18 回

老後の不安増大、年金基金の今後

先月、AIJ投資顧問による約2000億円の企業年金の大半が消失した事件が発覚。これに伴い、金融庁は年金運用を担う投資顧問会社の他、信託銀行、企業年金への本格的な調査を開始した。また、この問題を受け、厚生労働省は399の厚生年金基金(全体の3分の2)に旧社会保険庁(現日本年金機構)OBを中心とした国家公務員が、646人天下りしていたことを明らかにした。国民にとって老後の安心・安定がままならない年金問題に加え、企業が従業員のために、さらなる安定を目的とした年金基金が、資金運用を委託しているAIJ投資顧問が崩壊した事実は衝撃的だ。

元来、企業年金は従業員の老後をより安定させるために設立をした。もし年金基金が破綻した場合、基金からもらえる年金をあきらめればよい−という単純な問題ではないようだ。年金基金は厚生年金(いわゆる二階部分)一部を代行し運用している。従って、代行して運用した厚生年金部分を返済しなければ、通常の厚生年金も満額は受け取れなくなる可能性が高い。このため、年金基金は既に開始されている受給者への支払いに加え、消失した金額も支払わなければならない。もちろんその支払いは年金基金に加盟する企業が負担することになる。加盟している企業が減少した場合、残された企業の分担金は増加する。現在の国内景気動向を勘案すると、中小零細企業が分担金の負担でさらなる連鎖倒産を引き起こす懸念もある。倒産が増加すれば、分担金が増える−という悪循環の構図が見えてくる。

従業員の老後の安心・安定のための基金が当該企業の存続を危うくしてしまう矛盾を生み出している。年金基金に加盟する企業は運送業者、タクシー会社、石油販売業者など景気低迷の長期化の影響を受けてきた中小零細企業が多い。あくまでも企業年金は自己責任の域は脱せないが、厚生年金基金に多数の天下りを行ってきた官僚の道義的責任は否定できない。

今後、政府はこうした社会保障の負の部分を徹底的に調査し、国民に公開しなければならない。その上で社会保障と税の一体改革のビジョンを明確にすることが急務だ。やみくもに消費税増税だけを推進させる方法は必ず失敗することを提言したい。

 



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