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安保関連法案衆院を通過

議論が深まるとともに安倍政権の支持率下がる


7月16日の衆院本会議で、集団的自衛権の行使容認を含む安保関連法案は自民党、公明党などの与党に加え次世代の党の賛成多数で可決された。これで同法案の審議の舞台は衆院から参院へ移された。

 これまで安保関連法案については、衆院特別委員会などで議論が展開されてきたが、当初、野党の質疑と政権側の答弁が噛み合わなかった。その後議論が進むにつれ、国民の立場からみると「アメリカの戦争に付き合う側面を否定できない」・「憲法違反の可能性が極めて高い」という世論が高まり、国会周辺を始め各地で安保法制を廃案にする−という趣旨の反対運動が盛り上がっている。さらに、大手メディアの世論調査をみると、安保法制の議論が進むとともに安倍政権の支持率が低下し、不支持率が高まっている。こうした世論調査の不支持増加は、先ごろ、安倍首相に近い大西英男衆議院議員(東京16区)らが自分たちの主張と異なる琉球新報・沖縄タイムスの二社を対象にして「マスコミを懲らしめろ」という趣旨の発言が言論封殺に結びつくのでは−という国民の危機感の表れでもある。

 7月15日衆院特別委で同法案が賛成多数で通過した後、安倍首相自らも「残念ながら、まだ国民の理解は進んでいる状況ではない」という趣旨の発言をしている。なぜ国民の理解が進んでいる状況ではないのに、衆院本会議で採決したのか?さらに、衆院特別委員会の浜田靖一委員長も「法律を10本束ねたのはいかがなものか」という趣旨の発言をしている。なぜ委員会を通過させた後、このような発言をしたのか?疑問が残る。こうした現状を鑑みると、安保法制関連法案の衆院通過は強行採決と言われても、政権与党幹部は反論できないだろう。

 今回の強行採決には多々問題はあるが、憲法学者の大多数が違憲と判断している法案を立法府である国会が強行採決したことが一番の問題である。権力者の横暴に唯一歯止めをかける憲法の規定を軽視することは許されない。(同コーナー前回号を参照)さらに、大多数の国民が今国会での法案成立に疑問を持っているにも関わらず、与党内で村上誠一郎氏、若狭勝氏の両議員が病欠した以外は反対する議員がいなかったことは残念だ。(村上氏は以前より法案は違憲だとして反対を表明。若狭氏は弁護士で元東京地検特捜部副部長。)以前の自民党であれば、もっと自由に反対意見を述べていた印象がある。これに加え、安倍政権と一線を画す自民党議員のメディア出演が減少し、与党幹部が党内の慎重論を押さえ込み「自民党は一枚岩」ということを無理やり演出しているようにも見える。これらの現象から自民党内での締めつけの強さは相当なもの−と察する事ができる。しかし、国会議員は通常の会社勤めのサラリーマンとは異なり、各選挙区から選ばれた国民の代表である。従って、党幹部からの圧力に屈することなく、自身の信念に基づき行動してもらいたい。

 今後参議院で引き続き安保法制の議論が行われる。良識の府と言われている参院は衆院と異なり首相の専権事項である解散がなく6年間の身分保障がされている。党幹部の顔色を伺うのではなく有権者の代弁者になるべきである。衆院の暴走に歯止めをかけることは、いわば参院としての責務であり、存在価値でもある。これまで幾度となく参院は衆院のカーボンコピーなど揶揄されてきた。ここで参院の必要性を国民に対し示すことができなければ、参院不要論に拍車が掛かることは明白だ。与野党問わず参議院議員は衆院との違いを披露できるか注目したい。

 安倍首相は同時期に莫大な費用がかかり国民の理解が得られていない新国立競技場の建設計画が白紙に戻した。無駄な公共事業の典型であるこの計画自体が見直されることは歓迎すべきことだ。しかし、これと安保法制とは別物である。仮に、政権幹部の中に国立競技場建設を白紙に戻せば、国民世論は納得し内閣支持率向上に結びつく−と考えているのであれば大間違いである。あくまでも政府は安保関連法案を真摯な姿勢で説明し、憲法違反になる箇所については修正するか、この法案を廃案にして次の国会で新しい法案を提出すべきである。



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