政治・石油業界を含む経済、各種市場などのテーマを独自の視点から分析・解説します。



株価暴落でアベノミクス終焉


マイナス金利という黒田総裁の奇策は逆効果


世界経済に対する不安感から、円高・株安の流れが止まらない。円相場は一時1ドル=110円台を付け、2月12日東京株式市場の日経平均株価は約1年4カ月ぶりに1万5千円台を割り込み、終値で1万4952円にまで下落した。こうした背景には中国経済の減速・記録的な原油安などが挙げられるが、先月末に行われた日銀のマイナス金利導入についても円安・株高という狙い通りには行かず、黒田総裁を主とした日銀首脳陣の奇策は大誤算だった。一国の中央銀行(日銀)の金融緩和政策では、世界の為替・株式市場をコントロールすることは無理がある。これまでアベノミクスという旗印の下、政権の思惑と合致し日銀の独立性が疑われるような一連の金融緩和で円安・株高を演出し経済の好循環を作り出す方法は限界がある事が証明された。

黒田総裁によるサプライズ的な金融緩和いわゆる「黒田バズーカ」の効果が薄れてきている。サプライズ政策を乱発すれば、通常時の総裁の発言はマーケットから信用されなくなる。今回のマイナス金利導入はタイミングも悪く、結果的には銀行・証券・保険といった業界の利益構造を根底から覆し、投資家心理を冷え込ませた可能性も高い。さらに、この時期の株価下落は多くの株式を所有する企業の資産を大きく目減りさせ、決算にマイナスの影響をもたらす。その結果、今春の賃上げにも悪影響を及ぼし、下がり続けている実質賃金の低下に追い打ちをかける格好になりそうだ。

そもそも金融緩和政策だけで実体経済を好転させる−というアベノミクスについては、このコーナーでは幾度となく否定的な見解を示してきた。(2015年10月17日号参照)これまで日銀が量的緩和を行い金融市場に大量な資金を供給しても、その資金は株式市場に流れ込み、一部の富裕層や株式所有者は恩恵を受けるが、一般庶民の実質賃金は下がり、円安による輸入品(日用品)の値上げなどメリットはない−という図式だった。しかし今回のマイナス金利導入と世界景気への警戒感で、今までアベノミクスの恩恵を受けた富裕層や大企業までもが窮地に追い込まれた。これに加え、年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立法人)が約135兆円の年金資産を運用しており、その含み損は昨年7月から9月に記録した7.9兆円をはるかに超える金額だろう。(2016年1月17日号参照)

今回の株式市場の暴落、日銀の円安誘導の失敗でアベノミクスの終焉が現実味を帯びてきた。そろそろアベノミクスの検証を行い、方向転換を模索しなければ手遅れになる。一強他弱と言われている現在の政治状況では、民主党など野党の力だけでは安倍政権の暴走は止められない。自民・公明などの与党で良識ある議員がアベノミクスの問題点を指摘し、改善する勢力が出現することに期待したい。

 



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