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友軍クルド人を見捨てたトランプ大統領


明らかに変貌した米国の同盟国戦略


 約一カ月前、トランプ米大統領は中東のシリアからの撤退を決めた。過激派組織IS(イスラム国)掃討作戦で、友軍的存在として危険な地上戦を担い活躍したクルド人武装勢力を見捨てた。その後、ISの最高指導者アブバクル・バグダディ容疑者を米軍の作戦で殺害したことを発表する記者会見で、「我々はシリアにとどまりたくない。米国の兵士を故郷に帰したい」と述べ、シリア撤退の正当性を強調した。確かに“アメリカ・ファースト”を大統領選挙時の公約として就任したトランプ氏は公約を遂行したに過ぎない。だが、戦略的な同盟関係にあるクルド人勢力に対するトルコの攻撃を事実上黙認することになった。これに対し、身内である米共和党のマコーネル上院院内総務、グラム上院議員、チェイニー下院議員ら複数の有力議員から「ロシア、イラン、シリアのアサド政権などが利するだけ」、「IS掃討作戦で重要な働きをしたクルド人を見捨てれば、同盟国に対する米国の信頼は失墜する」といった厳しい批判の声が多く聞かれた。

 トランプ大統領就任以降、ホワイトハウスの外交姿勢は大きく変化した。通商交渉など経済分野に安全保障のカードをちらつかせたり、同盟国に駐留する米軍の駐留費を大幅な増額を要求したりする現実に戸惑うばかりだ。同じ“資本主義”という価値観を共有し世界平和を志してきた同盟国にとっては、アメリカというリーダー的な存在が豹変したことで、安全保障政策や貿易、外交政策を見直さなければならない局面に追い込まれている。幸いにして日本の場合、安倍首相がトランプ大統領就任前から個人的な人間関係を構築し、他の同盟国よりは悪しき驚くべき事実は発生していない。

 しかし、これまでのトランプ大統領の発言を顧みると、日米安保条約は「日本には米国を防衛する義務がなく、一方的な条約で不公平である」など、日本も以前のように日米同盟さえ強固であれば、安全保障上問題ない-とは言い切れない時代に突入した。同盟国に対する「トランプ大統領と米国政府の考え方は必ずしも一致していない」という事実もある。しかし、外交、安全保障分野においてトランプ大統領と今後の方向性や見解の相違があった閣僚達は、次々と閣外へ去って行った。ティラーソン元国務長官、マクマスター元大統領補佐官(国家安全保障担当)、マティス元国防長官、コーツ元国家情報長官、ボルトン元大統領補佐官(国家安全保障担当)など、外交、安全保障対策のプロ達がこの政権には残っていない。いわばトランプ大統領に対し正論をぶつける実力者が存在しないことは、日本を含め同盟国にとって不都合な現実だ。

 次期大統領選まであと一年を切った。仮にトランプ大統領が再選を果たせば、トランプ流の身勝手な“アメリカ・ファースト”がさらに4年続く。この場合、アメリカと同盟国の関係は今以上に混乱し、米国を中心とした世界の勢力図が崩壊する可能性も否定できない。日本はアメリカの核の傘の下にいるという現実とこれまでの同盟関係を踏まえると、日米同盟を堅持しなければならない。その上で米国の日本に対するスタンスが大きく変化した場合、日本独自の核戦略を含めた安全保障政策と新たな外交戦略を模索しなければならない。





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