㈱伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 伊藤 敏憲



経営の抜本的改革に取り組む好機

伊藤 敏憲


石油元売の17年度決算は空前の好業績に


石油元売の収益力が石油製品のマージン拡大によって大幅に向上していることが、先ごろ公表された17年9月期決算によって明らかになりました。


JXTGホールディングスの17年4月~9月期決算は、エネルギー、石油・天然ガス開発、金属の主要三事業すべてが大幅な増益となり、在庫影響除き営業利益は2,194億円となり前年同期の926億円を1,268億円上回りました。事業部門別の内訳は、エネルギー事業1,611億円(16年4~9月期656億円)、石油・天然ガス開発事業79億円(同▲42億円)、金属事業267億円(同67億円)、その他237億円(同245億円)で、増益額が最も大きかったのはエネルギー事業でした。会社は、エネルギー事業が前年同期に対して955億円増益となった理由を、石油製品の数量減▲29億円、石油製品のマージン改善等+774億円、統合シナジー+175億円、石油製品の特殊要因反転▲56億円、石化製品の数量増+39億円、石化製品のマージン改善等+52億円と説明しています。なお、統合シナジーは年間230億円の計画を上回るペースで進捗しています。


コスモエネルギーも、石油、石油化学、石油開発の主要三事業すべてが増益となり、17年4月~9月期の在庫影響除き経常利益は493億円と前年同期の14億円を479億円上回りました。事業部門別の内訳は、石油事業203億円(16年4月~9月期▲112億円)、石油化学事業167億円(同43億円)、石油開発事業90億円(同63億円)、その他33億円(同20億円)で、増益幅が大きかったのは石油事業でした。会社は、石油事業の利益変動要因を、マージン改善+218億円、数量増+15憶円、輸出収益減▲4億円、製油所稼働率改善等による精製コストの変動他+86億円と説明しています。


出光興産の17年4月~9月期の在庫影響除き営業利益は前年同期比548億円増の921億円となりました。部門別の内訳は、石油製品371億円(前年同期182億円)、石油化学製品206億円(同169億円)、資源328億円(同23億円)、その他15億円(同▲1億円)と、やはり主要全部門が増益になりました。増益要因は石油製品のマージン改善+244億円、石油化学製品のマージン改善他+51億円、石炭開発事業の収益改善+181億円などでした。


昭和シェル石油の在庫評価の影響を除いたCCSベース経常利益は17年1月~9月期が前年同期比130億円増の374億円、7月~9月期だけだと同91億円増の169億円となりました。増益要因は石油製品のマージンの改善だったと会社は説明しています。



石油製品のマージン拡大が業績改善の主因


 このように石油元売各社の業績が改善した主因は石油製品のマージン拡大だったのですが、これは市況統計によっても確認できます。


資源エネルギー庁から公表されている日本エネルギー経済研究所石油情報センターによる給油所小売価格調査と卸価格調査のレギュラーガソリン、灯油、軽油の全国平均価格と、貿易統計の原油輸入CIF価格の差から計算される17年4月~9月の石油製品の精製・販売マージンの平均値は、レギュラーガソリンが㍑29.7円、軽油が㍑32.6円で、灯油が㍑32.1円で、前年同期に対して、ガソリンが㍑3.0円、軽油が㍑1.4円、灯油が㍑5.3円改善しています。原油価格の上昇に伴って自家燃料コストが増加していますので、実際のマージン改善幅はやや小さいと推定されますが、白油三品のマージンは明らかに改善しているのです。精製・販売マージンは、10月にさらに改善し、11月も高水準を維持しています。


なお、ガソリンの精製・販売マージンを卸売マージンと小売マージンに分解すると、卸売マージンは16年4月~9月㍑16.3円、17年4月~9月㍑16.8円、小売マージンは㍑10.5円から㍑12.9円へいずれも改善しています。ガソリンの卸売マージンと小売マージンの関係は、民族系元売各社が週決の市況連動型の価格体系を導入してから逆相関する傾向が見られました。今年4月以降、卸売及び小売の両段階でマージンが改善したということは、小売市況が底上げされたからと考えられます。


エネルギー供給構造高度化法(以下「高度化法」)の二次告示を達成するために、精製・元売各社が、設備の集約や能力の削減に取り組んだことが、収益環境が改善した理由の一つと考えられます。高度化法の一次告示が出された直後の14年4月に394万6千BD(日量バレル)だった常圧蒸留装置の原油処理能力は、17年4月に351万6千BDへ43万BD削減されました。この結果、定修による影響を除いた常圧蒸留装置の実質稼働率は16年4月~9月の89%から17年4月~9月の95%へ約6%ポイント向上し、過剰供給に陥りにくい状態にあると考えられます。


それ以上に効果を発揮していると考えられるのがJXTGエネルギーの市況改善に向けた徹底した取り組みです。JXTGエネルギーは、国内における製品需給を引き締めているだけでなく、エネオスフロンティア、エネオスウィング、中央石油販売などの販売子会社において採算販売に徹しているからと考えられます。JXTGエネルギーの小売価格是正の取り組みは、SSの店頭価格を調査して公表しているウェブサイト情報の安売上位SSに、昨年末からJXおよびTG系の名前がほとんど見られなくなったことからも確認することができます。


JXTGエネルギーが手綱を緩めない限り、当面、石油業界の収益環境は良好に推移すると予想されます。この間に構造改革を成すことができるかどうかが、石油精製・元売、並びに販売事業者の将来を左右することになると考えられます。



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