㈱伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 伊藤 敏憲



原油と石油製品の価格の季節性

伊藤 敏憲



原油価格に季節性はない


石油製品の価格には季節性があるものとないものがあり、その事情は、地域によっても異なります。

 
まず、原油の価格には季節性はみられません。指標原油の一つであるNYMEX(ニューヨーク商業取引所)のCrude Futures(代表油種の「WTI原油」と称される)の先物期近価格の1987年から2017年の各月の平均を比較すると、最も平均が高い月は7月で1バレル当たり45.79ドル、もっとも安い月は1月で41.26ドル、冬季の12月~2月の平均が41.77ドル、夏季の6月~8月の平均が45.55ドル台でしたので、この結果だけからすると、夏季の方が冬季より高いと言えなくもないのですが、この31年間で最も多く高値をつけた月は12月の9回、2番目が1月の6回で、2月の2回を含めると、半分以上の年で冬季に高値を記録していますので、必ずしも夏季の方が高いといった季節性があるわけではないのです。

  先物市場の限月別の価格の推移をみても、ほとんどの時期に、主に期近物の価格水準が影響して、相対的に期近物の価格が低かった時には期近物に比べて期先物が高くなるコンタンゴ(先高)、期近物の価格が高かった時には期近物より期先物の方が安くなるバックワーデーション(先安)の放物線を季節に拠らず描いていましたので、原油価格には季節性をないと判断するのが妥当と思われます。



米国では石油製品のクラッキングスプレッドに季節性がみられる


一方、石油製品の価格には国や地域によって季節性がみられることがあります。ただし、石油製品の価格は、原油価格の動きを反映しますので、石油製品の価格そのものの水準ではなく、石油製品と原油の価格との値差(クラッキングスプレッド)に季節性がみられることがあるのです。


例えば、NYMEXの石油製品と原油のそれぞれ先物期近価格の差から算出したクラッキングスプレッドの変化をみると、ガソリンは、10月~12月に最も小さくなった後、1月~3月にかけて拡大し、3月~7月に最も大きくなり、8月~12月にかけて縮小する傾向がみられます。他方、ヒーティングオイルは、1月~3月にかけて縮小した後、年末に向けて拡大する傾向がみられます。このようにガソリンとヒーティングのクラッキングスプレッドには逆相関する傾向がみられるのです。なお、ガソリン、ヒーティングオイルともに、需要がもっとも増える月ではなく、その数か月前に高値をつけることが多くなっています。この理由の一つは在庫を積み上げる時期に価格が上がりやすくなっているからと考えることができます。


日本の石油製品価格に季節性はみられない


ところが、わが国では、石油製品のクラッキングスプレッドに一定の季節性を読み取ることができません。もちろん灯油については、今季のように厳冬の影響で需要が急増して需給がひっ迫すると、市況が高騰してクラッキングスプレッドが急拡大することがありますが、暖冬の年には夏季より需要期の冬季にクラッキングスプレッドが縮小したことがありましたので、季節性があるとは評価できません。ガソリンについてもわが国では米国のような季節性はみられません。そしてわが国ではガソリンと灯油のクラッキングスプレッドはほぼ同じように動いています。


わが国の石油製品市場では、石油製品の大半が、石油元売と取引契約を結んだ販売事業者を通じて流通する系列取引主体であることが、米国と価格形成が異なっている背景事情の一つになっていると考えられます。すなわち、わが国では、ガソリン、灯油、軽油などの市況は、海外の市況の影響より、国内で流通している石油元売の大半を供給している石油元売各社の経営施策による影響をより強く受けやすくなっていると考えられるのです。




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