㈱伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 伊藤 敏憲



石油精製・元売は2年連続で実質最高利益を更新



伊藤 敏憲


元売各社の在庫影響除き経常利益は2年連続で過去最高を更新


石油元売の2018年度連結決算は、石油製品市況の改善、原油・天然ガス・石炭価格上昇による資源開発事業の収益拡大、コスト削減・効率化などにより、前年に続いて好業績となりました。


原油価格が、2017年度は年間を通じて上昇傾向で推移したのに対して、2018年度は11月から12月にかけて急落し期首に比べると期末の方が安くなりました。このため2017年度は原油及び石油製品の在庫評価影響によって利益が大きくかさ上げされ、2018年度は減益要因になりましたが、在庫評価影響を除いた実質的な利益はすべての元売で前年に続いて2年連続で過去最高を更新しました。



2018年度が好決算となった理由の一つは石油製品の国内市況改善


元売各社の2018年度決算が好業績となった要因は、エネルギー資源価格の上昇によって、石油・天然ガス・石炭などの資源開発事業の収益が拡大したことでした。また、石油製品の国内市況が改善したこと、コスト削減・効率化が進んだことなども増益要因になりました。


18年度の石油製品の卸売マージンの変化を月次でみると、4月~10月にかけて拡大傾向で推移し、11月~12月にかけて急激に縮小しましたが、2月以降に再び拡大し、年平均では前年の水準を上回りました。11月~1月に卸売マージンが悪化したのは、原油価格が下落した局面で、ガソリン・軽油などのスポット市況が原油市況に呼応して下落し、仕切価格に反映されたため、原油コストが低下するまでのタイムラグによってマージンが圧迫されたからです。原油価格が上昇傾向に転じた年明け以降に卸売マージンは急回復しました。2017年4月に誕生したJXTGエネルギーが、卸・小売の両段階で採算販売を徹底していることが、市況の改善につながっていると考えられます。


この結果、暖冬の影響で灯油の需要が大幅に減少し、燃費の改善や他エネルギーへのシフトなどによって、ガソリン、重油などの需要も減少しましたが、石油製品のマージン改善、コスト削減・効率化などによって、元売各社の石油製品事業は好業績を達成しました。


石油製品の国内シェアの約5割を占めるJXTGエネルギーが、採算販売を継続する方針を示しており、2019年4月に誕生した出光昭和シェルも、大株主に対して向こう3年間に当期純利益を5,000億円以上稼ぐことを公約していますので、市況を崩すような販売政策をとるとは思えません。よって、当面、石油製品の国内事業は良好な収益環境が維持されると予想されます。ただし、国内市況悪化につながるリスク要因も存在します。例えば、需要の減少に対応した国内向け供給力削減の遅れ、製品輸入の拡大、アジアなど海外市況の悪化、天候不順による需要の減少、原油価格の乱高下、元売各社の販売政策の変更などです。石油製品の国内需要が減少傾向で推移しているのに対して精製能力の削減が進んでいませんので、製油所の稼働率は低下傾向で推移しています。良好な市況を維持しつつ、製油所のコスト競争力及び収益性を高めるためには、精製設備の廃止、製油所の集約、海外事業者との提携などによる輸出専用製油所化などの対応が必要不可欠と思われます。


元売大手の2018年度決算の概要は以下の通りです。



JXTGホールディングス


2018年度連結決算は、営業利益が前年比496億円増の5,371億円、親会社株主に帰属する当期純利益が同396億円減の3,223億円、在庫影響(2017年度+1,149億円、2018年度214億円)除き営業利益は、前年比1,431億円増の5,157億円。石油製品マージン改善、資源価格の上昇、統合シナジー、前年度にカセロネス銅鉱山の減損損失1,160億円を営業損益内に計上した反動などによって、業績は拡大し、前年度に続いて3か年計画で掲げた利益目標を上回りました。


18年度の在庫影響除き営業利益5,157億円の事業部門別内訳は、石油製品2,424億円(前年1,687億円)、石油化学製品1,117億円(同1,349億円)、石油・天然ガス開発378億円(同376億円)、金属上流177億円(同▲1,159億円)、金属中下流504億円(同537億円)、その他557億円(936億円)で、統合シナジー(17年度441億円、18年度787億円)、培地事業売却益等によって利益を積み上げた石油製品事業、前年度にカセロネス鉱山の減損損失を計上した反動で収支が大きく改善した金属上流事業が利益増を牽引しました。



出光興産


2018年度連結決算の営業利益は前年比220億円減の1,793億円、経常利益は同572億円減の1,691億円、親会社株主に帰属する当期純利益は同809億円減の815億円と減益になりましたが、在庫評価影響(17年度+311億円、18年度+60億円)除き営業利益は同31億円増の1,733億円、同じく親会社株主に帰属する当期純利益は632億円減の815億円となり、いずれも過去最高を更新しました。


在庫影響除き営業利益1,733億円のセグメント別内訳は、石油製品505億円(前年度575億円)、石油化学製品318億円(同422億円)、石油開発370億円(同272億円)、石炭他501億円(同396億円)、その他および調整額39億円(同37億円)で、資源エネルギー価格の上昇を背景に資源開発事業の利益が前年実績を上回ったのが好業績が達成された要員でした。


昭和シェル石油の2018年度(2017年1月~2018年3月の15ヶ月決算)の連結業績は、営業利益が前年比150億円減の953億円、経常利益が同247億円減の1,010億円、親会社株主に帰属する当期純利益が同270億円減の391億円と減益になりましたが、在庫影響(2017年度+306億円、2018年度+110億円)除き営業利益は同46億円増の843億円でした。



コスモエネルギーホールディングス


2018年度連結決算の営業利益は前年比172億円減の947億円、経常利益は同202億円減の967億円、親会社株主に帰属する当期純利益は同197億円減の531億円。在庫評価影響(17年度+210億円、18年度▲107億円)除き経常利益は同115億円増の1,074億円と前年実績を上回りました。


2018年度の在庫影響除き経常利益の事業部門別内訳は、石油事業249億円(前年度378億円)、石油化学153億円(同304億円)、石油開発569億円(同183億円)、その他103億円(同94億円)で、2017年に採算を開始したヘイル油田の増産と価格の上昇によって石油開発事業の利益が前年実績を大きく上回りました。



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