㈱伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 伊藤 敏憲


原油価格を押し上げた米国の原油・石油製品の
需給構造が変化?!


伊藤 敏憲


増加傾向に転じた米国の原油在庫


米国の石油掘削リグの稼働基数は、シェール資源の探鉱・生産技術の向上や原油価格の上昇を背景に2009年半ばから2014年秋にかけて急増し2014年10月には1,600を超えていましたが、2014年秋以降の原油価格の下落によって急減し、2016年5月には約300まで減少していました。そして、原油価格の反発と探鉱・生産技術のさらなる向上などによって石油掘削リグの稼働基数は2016年6月に増加に転じ、原油の生産量も2016年11月に増加傾向となり今年10月初旬の生産量は1,120万BDと米国史上最高の水準まで拡大しました。


米国EIA(Energy Information Administration)が公表している週次の需給統計によると、米国の原油在庫量は、2014年12月下旬から2017年7月上旬まで前年同期の水準を上回って推移していましたが、2017年4月から前週比で減少傾向に転じ、2017年7月中旬から前年同期の水準を下回るようになり、今年4月には前年同期の水準を約20%下回って過去10年間の平均並みまで低下し、在庫に過剰感はなくなっていました。しかし、9月21日から5週連続で前週の水準を上回り、10月19日の在庫量は9月7日比で2,865万バレル、7%増加し4億2,279万バレルまで増えています。


米国の原油在庫の減少が原油価格の上昇要因の一つになっていたと考えられます。まだ原油の在庫量は、前年同期の水準を8%下回っていますし、その水準も過去10年間の平均を若干上回る程度で、まだ過剰感はありません。しかし、このまま在庫が増加し続けると原油価格を押し下げる材料の一つになる可能性があります。



米国のガソリン需要は減少傾向に


一方、米国の石油製品需要の過半を占めるガソリンの需要は、2017年9月から今年7月にかけて増加傾向で推移していましたが、8月に減少傾向に転じました。ガソリン需要が伸び悩むようになった利用の一つはガソリン価格の上昇にあると思われますが、新車販売台数が減少して自動車普及台数の伸びが鈍化し、電気自動車など電動車の普及による燃費の改善効果が上回るようになったことも理由になっていると考えられます。わが国においてガソリン需要が減少傾向に転じた時期と同じような構造的な変化が生じている可能性があるのです。


需要が減少すれば需給は緩みやすくなります。ガソリンの在庫は、今年6月中旬に前年同期の水準を上回るようになり、季節的に在庫が減少する8月~9月も増加し、8月には同時期として過去で最も高い水準まで積み上がりました。10月19日の在庫量は2億2,933万バレルで前年同期の水準を6%上回っています。


ジェット燃料(ケロシン)の在庫も今年7月から10月上旬まで前年同期の水準を上回っていました。


石油製品の需要の減少、並びに過剰在庫は、当然ながら、原油の需給にも影響を及ぼします。



原油及び石油製品の需給構造の変化は原油価格に影響を及ぼす可能性がある


このように、①原油価格の上昇、及びシェール資源の探鉱・生産技術の向上を背景に米国内の原油生産が拡大したこと、②米国内の石油製品需要の過半を占めるガソリンの国内需要が減少傾向に転じたことによって、米国の原油・石油製品の需給構造が変化した可能性があるのです。


昨年央以降の原油価格の上昇理由の一つは、米国の原油・石油製品市場において需給が引き締まっていたことだったと考えられるだけに、これらの傾向が今後も続くかどうかが注目されます。




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