㈱伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 伊藤 敏憲



ガソリンの価格・税率等について



伊藤 敏憲


今年の夏のガソリン価格は昨年より安いが…


お盆の帰省シーズンを控えた8月には、例年、マスコミがガソリン価格を話題にすることが多く、今年の夏は昨年に比べてガソリンが安いと報道されています。確かに8月第一週のレギュラーガソリンの小売価格の全国平均は1リットル当たり145.5円(消費税込、一般社団法人エネルギー経済研究所石油情報センター調べ)で、前年同期の152.1円に比べて㍑6.6円値下がりしており、安売り店や値崩れが起きている一部の地域では前年より㍑10円前後安く売られているケースも見られます。


いつの時点と比較するかによって価格の変化と変動理由は異なります。レギュラーガソリンの過去5年間の8月の全国平均価格をみると、2014年㍑169.2円、2015年㍑139.2円、2016年㍑122.1円、2017年㍑131.5円、2018年㍑152.2円で、前述した今年7月末の価格は昨年の夏季に比べると安くなっていましたが、2年前と比べると㍑約14円、3年前に比べると㍑約24円高くなっていました。一方、5年前の2014年と比べると㍑約24円安く、これまでで最も高かった2008年8月の㍑184.3円と比べると㍑約39円安くなっています。前年の価格は覚えられていても、2、3年前の価格ですら話題にならないのです。


ちなみに、昨年8月から今年8月にレギュラーガソリンの価格が㍑6円余り値下がりした主な理由は、原油コストが㍑7円余り安くなったからです。小売価格と原油輸入コストの差から計算される粗マージン(精製・販売マージン)は㍑約1円拡大しています。石油製品の粗マージンは、需給ギャップ(石油製品の生産・供給能力と国内需要との差)、元売各社の販売施策、販売事業者の対応などによって左右されます。


なお、過去にガソリンの小売価格に最も強く影響していたのは原油コストの変動でした。ガソリンの粗マージンは1990年代前半から半ばにかけて急激に縮小した後、2000年代は拡大・縮小を繰り返し、2014年頃から拡大傾向で推移しています。2014年以降にガソリンの粗マージンが拡大した理由の一つは、精製能力の削減によって需給ギャップが段階的に縮小したこと、石油元売の再編・集約が進んで過剰供給・過当販売競争が起きにくくなったことなどと考えられます。



国民の常識にはなっていないガソリンの二重課税問題


ところで、ガソリンには製品出荷段階で揮発油税及び地方揮発油税が合計㍑53.8円(以下「ガソリン税」、沖縄県は㍑7円軽減された㍑46.8円)課されていますが、ガソリン税にも消費税が課されています。1989年4月に3%の消費税が導入された際、それ以前に製品やサービスに課されていた娯楽施設利用税、トランプ類税、物品税等などは廃止され、酒税やたばこ消費税などは税額が引下げられましたが、ガソリンにはこのような配慮がなされませんでした。


今年10月に消費税率が8%から10%に引き上げられると、ガソリンの小売価格は2~3円程度上昇し、揮発油税に課されている消費税額も㍑4.30円から㍑5.38円へ㍑1.08円増額されます。石油業界は、消費税導入時からガソリンの二重課税の問題を各方面に提起し続けていますが、必ずしも国民の一般常識にはなっていないように思われます。



税率改定時には混乱を避ける対策が必要


なお、過去の消費税の創設・税率改定時(1989年4月:3%導入、1997年4月:5%へ引き上げ、2014年4月:8%へ引き上げ)には、税率が引き上げられる1~2週間前から満タン給油の増加や駆け込み需要の発生によって販売量が増加し、直前1~3日には、一部のSSで品切れ、給油量の限定などが生じ、税率引き上げ後1ヵ月程度の期間に駆け込み需要の反動によって販売量が減少する傾向が見られました。そして、いずれのケースにおいても税率が引き上げられる直前に安売りが減少して粗マージンがやや拡大する動きが見られました。


また、2008年4月に㍑25.1円の暫定税率が期限切れによって廃止され、翌5月に復活した際には、3月に買い控え、4月に仮需の発生による販売量増、5月に仮需の反動による販売量減が生じ、ガソリンの粗マージンは、4月に㍑約3円拡大しましたが、5月には㍑約4円縮小しました。


今年10月に予定されている消費税率10%への引き上げ時にも過去の消費増税時と同様の動きが起きかねませんが、今回はタンクローリーの運転手が不足していますので、SSでの販売量の急激な増加にタイムリーに対応できなくなってしまう可能性があります。極端な駆け込み給油が生じないように様々な対策を講じておく必要があると思われます。



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