㈱伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 伊藤 敏憲


米国のガソリン需要の伸び悩みが原油安要因の一つ


伊藤 敏憲


年央から減少傾向に転じた米国のガソリン出荷量が原油価格下落の一因


米国のガソリン出荷量が伸び悩んでいます。米国Energy Information Administration(EIA)の統計によると、史上最高を記録した2016年の出荷量は3,658百万バレルでしたが、2017年は3,636百万バレルとなり2012年以来5年ぶりに前年実績を割り込みました。そして、2018年も年央から前年同期の実績を下回る週が多くなっており、ガソリンの出荷ペースは年央から前年同期の水準を約1%下回っています。


米国の石油製品全体の需要に占めるガソリンの比率は約50%で、ガソリン需要の増減が石油製品全体の需要に大きな影響を及ぼします。米国では、原油の在庫が9月中旬以降に増加傾向に転じるなど需給が緩みつつありますが、ガソリン需要の伸び悩みがその一因になっていると考えられるのです。


ちなみに、11月末の原油在庫は9月中旬のボトム水準から約12%積み上がり、平年の水準をやや上回るようになっています。原油価格が下落に転じた時期と、米国の原油在庫が増加した時期が一致しているのは偶然ではありません。これが原油市況の下落要因の一つなのです。



エコカーの普及がガソリン需要の減少理由


ガソリン需要に影響を及ぼすのは、自動車の保有台数の変化、車種構成の変化、新車と廃車の平均燃費の差、天候、景気、ガソリン価格などと考えられます。このうち自動車の保有台数は年率1%程度のペースで増加しており、車種構成も相対的に燃費の悪いピックアップトラックやSUVの構成比が高まっていますので、需要を押し上げる方向に働いていると考えられます。今年は全米の需要に大きな影響を及ぼすほどの異常気象は起きていません。ガソリン価格の上昇による影響は、上昇局面では一時的に需要を抑制することがありますが、長期間影響を及ぼし続けるわけではありません。よって、ガソリン需要が伸び悩んでいる主な理由は自動車の平均燃費が改善しているためと考えられます。具体的には、電気自動車、プラグイン・ハイブリッドカー、ハイブリッドカーなどの電動車の普及や、同様のクラスの車種における燃費の改善などによる効果と考えられます。



米国で本格的にエコカーが普及するようになると…


今年の1月~11月のアメリカの新車の販売台数は、MARKLINESが集計・公表している統計によると、乗用車が前年同期比13.3%減の503万2千台、小型トラック及びSUVが同8.0%増の1,060万4千台、自動車全体が同0.1%増の1,563万6千台で、前年末の保有台数に対する新車販売台数の比率は年率7%弱です。登録自動車台数は年率1%弱のペースで増加していますので、今年販売された新車に置き換わった比率は約6%と計算されます。


これらのデータから、アメリカでは、相対的に燃費が悪いピックアップトラックやSUVの構成比が高くなっていることがわかりますが、この分野ではまだ電気自動車やプラグイン・ハイブリッドカーなどのエコカーの普及率が低いので、今後の燃費改善余地はエコカーが急速に普及している欧州や日本に比べて大きいと考えられます。


ちなみに日本では自動車の平均燃費が2000年~2017年にかけて約20%改善し、これがガソリン需要減少の主因になっています。米国で、エコカーへのシフトがすべての車種で本格的に進みだすと、石油需要を抑制し、しいては原油価格の抑制要因になると考えられるのです。




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