㈱伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 伊藤 敏憲



米国のガソリン需要変調の原油相場への影響は小さくない



伊藤 敏憲


原油需給が引き締まるのは春以降と予測


原油相場が需給の裏付けがない中で大きく変動することは少ない。昨年10月初旬の高値から12月下旬にかけてNYMEXのCrude Oil Futuresの期近価格が1バレル76ドルから43ドル、ドバイ原油スポット価格が84ドルから49ドルまで急落した局面では、2017年後半から減少傾向で推移していた米国の原油在庫が増加に転じていた。米国の原油在庫は、9月中旬から11月下旬にかけて17%積み上がり、その後も高止まりしている。その背景には、米国内での原油生産量の増加、ガソリンの需要減少および在庫増加などがあった。


米国の原油生産量は原油価格が10月以降に急落した後も今年1月初旬現在まで日量1,160万~1,170万バレルという世界最高水準で高止まりしている。シェール資源の開発が技術進化等により拡大したためだが、原油価格が40ドルを上回っていれば、新規開発が抑制されることはあったとしても生産量がすぐに減少することはないので、米国の原油生産量が減少に向かうのは春以降になると予想される。昨年12月に協調減産の延長で合意したOPECやロシアなど主要産油国でも40~60ドルの油価では、価格の低下をむしろ増産でカバーしたいという意識が働きやすいので生産は抑制されにくい。世界の原油需給が引き締まる方向に向かうのは春以降になると予想される。


石油需要と景気との関連性は強くない。用途分野が利便性やコストなどから他のエネルギーに代替されにくい輸送用燃料や石化製品の原料などの分野に収れんされているからだ。石油需要は、人口の増、社会・経済の高度化、利用機器の普及などによって拡大する一方で、他エネルギーへのシフトや利用効率の改善によって抑制されている。新興国や発展途上国では前者の効果が大きいため需要が拡大しているが、欧州や日本では後者の効果によって需要が減少傾向で推移している。米国では、2005年から2012年まで需要が減少したが、その後は、燃費の悪いピックアップトラックやSUVの普及によるガソリン需要の押し上げなどから需要が増加していた。しかし、ハイブリッドカーや電気自動車などのエコカーがほぼすべての車種に導入されてきたこともあり、米国のガソリン需要は昨年の半ばから前年同期の水準を下回るようになっている。18年実績で世界の石油需要に占める米国の比率は約20%、米国の石油製品生産量に占めるガソリンの構成比は約45%、米国のガソリン需要の減少が世界の原油需給並びに市況に与える影響は小さくないと考えられる。


原油市況は、昨年末以降に反発し安値から10ドル近く値を戻したが、需給が引き締まっておらず、景況感や投資環境も不透明なため、すぐに下落前の水準に戻るとは思えない。ただし、原油市況が30ドル前後まで低落していた2016年初と比べると、需給はさほど緩んでおらず、主要国の景気や投資環境もそれほど悪くない。当面は生産量が落ちにくいため需給が引き締まりにくい状況が続くと予想されるので、原油相場は安値を模索する展開が予想されるが、春から年後半にかけて、原油需給が引き締まり、景況感や投資環境が良化すれば、NY原油先物期近価格は60ドル台、ドバイ原油スポット価格は70ドル程度まで反発すると見込まれる。



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