㈱伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 伊藤 敏憲



令和時代に石油業界はどうなるか



伊藤 敏憲


石油元売の再編・集約は令和2年に一段落へ


石油元売の再編・集約は平成時代半ばから急速に進みました。平成時代に起きた主な合併・経営統合は下記の通りです。


・1999年(平成11年)に日本石油と三菱石油の合併により日石三菱が誕生(後の新日本石油)

・2000年に東燃とゼネラル石油が合併し東燃ゼネラル石油が誕生

・2002年に親会社の合併によりエッソ石油とモービル石油が合併しエクソンモービが誕生

・2008年に新日本石油が九州石油を吸収合併

・2010年に新日本石油と新日鉱ホールディングスが経営を統合しJX日鉱日石エネルギー(後のJXエネルギー)が誕生

・2012年に東燃ゼネラル石油がEMGマーケティングを子会社化

・2014年に東燃ゼネラル石油が三井石油を完全子会社化

・2017年にJXと東燃ゼネラル石油が経営を統合しJXTGが誕生

・2019年に出光興産と昭和シェル石油が経営統合し出光昭和シェルが誕生
 そして、2020年(令和2年)にキグナス石油の石油供給元がJXTGエネルギーからコスモエネルギーに切り替えられることで、元売は、JXTGエネルギー、出光昭和シェル、コスモエネルギー、太陽石油の4グループに再編・集約されることになると考えられます。



製油所の再編・集約はまだ道半ば


製油所の再編・集約も平成時代に進みましたが、製油所の再編・集約は、今後も継続されると予想されます。


ガソリン、灯油、産業用燃料油などの国内需要が減少傾向で推移すると予想されますし、2017年3月末が期限だったエネルギー供給構造高度化法の二次告示への対応のほとんどが設備を廃棄しない公称能力の削減によって行われましたので、潜在的な設備能力と需要との間に大きなギャップが生じており、かつ、今後、需給ギャップがさらに拡大していくと予想されるからです。なお、公称能力の削減幅はわが国の平均的な製油所3か所分に相当する日量40数万バレルに及びます。


このため、製品輸出の拡大、石化製品への生産シフト、海外事業者との共同事業化などに取り組むだけでは、過剰能力を調整しきれないと予想されますので、令和時代には、精製設備の廃止、精販体制の組み換え、製油所の再編・集約といった、より踏み込んだ対策を講じる必要が生じると思われます。



多くの石油販売事業者に求められる事業構造改革


石油製品の小売事業は、JXTGエネルギーが誕生した2017年半ばから比較的良好な収益環境が維持されており、当面、好環境が維持されると見込まれますが、ガソリンをはじめとする石油製品の需要は減少傾向で推移する見通しですので、石油販売事業者は、中長期的にみると、石油製品の販売量の拡大に拠らずに高い収益を確保できる事業構造への転換を図ることが必要になると考えられます。


そのためには、資金を投じて中長期的な視点に立った経営効率化策や収益拡大策に取り組むことを検討すべきと思われます。また、構造的な課題ともなりつつある求人難への対処も重要な課題になると思われます。


具体的には、合理化・効率化につながる省力化投資を行ったり、就業体制を見直したりすることで、コストを低減して収支を改善できるようにしたり、石油製品以外の事業を強化したり、事業を複合化したりすることなどを検討すべきと思われます。


多くのSS事業者にとって本業ともいえるカーケアビジネスの経営環境は年々変化し続けています。自動車の構造の変化や自動車メーカーのユーザー囲い込み戦略などによって、SS事業者が点検・整備できる車種が絞り込まれつつあり、カーケアビジネス全般でカーディーラーがシェアを拡大しつつあるからです。このような事情に対処するためには、点検・整備に関しては、車種やお客様のニーズを考慮した選択的なアプローチ、SS店頭以外での集客、スムーズで効果的な提案、質の高い作業の提供、顧客の囲い込みなどが、より重要になると思われます。


自動車関連ビジネスは、新しい製品・技術・サービスが次々に提供される発展性のある事業分野ですが、新しいビジネスを展開するためには、設備・機器・システムの導入、スタッフの研修、スタッフの増員などが必要になるケースもあります。新たな取り組みで成果を上げるためには、①正確な情報の収集と評価に努めること、②自らの経営資源と照らして将来性があると思われる事業には先んじて取り組むこと、③努力と工夫を重ねること、④成果が上がらなかった場合には早めに見切りをつけることなどが求められます。お客様への提案力を高めるためには、機能や使い勝手が近年著しく進化しているタブレット端末等を用いたシステムの導入・活用を検討することも対策の一つになると思われます。


現状で十分な利益が確保できていない場合は、業態の転換や、事情によっては廃業も検討すべきと思われます。石油販売業の収益環境がさらに大きく改善するとは思えないからです。石油販売業の収益環境が良好に推移すると見込まれる令和元年から始まる向こう3年間は、石油販売事業者において将来に向けた事業戦略に取り組む好機でしょう。



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