㈱伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 伊藤 敏憲



今後のエネルギー関連制度・事業環境の変化に石油業界はどのように対応すべきか

伊藤 敏憲




石油元売、有力販売事業者が小売電気事業に続々と参入


4月1日に電力小売りが全面自由化されました。JXエネルギー、昭和シェル石油、東燃ゼネラル石油が参入しました。この3社以外にも、出光興産、コスモ石油、伊藤忠エネクス、シナネン、ミツウロコ、新出光などが、本体あるいは子会社が小売電気事業者の登録を済ませ、一部は営業活動を開始しています。さらに、多くの石油販売事業者が、自ら、あるいは、取引先や異業種の事業者とタイアップして、小売電気事業に参入しようとしています。


JXエネルギー、昭和シェル石油は、発電専用のLNG火力発電所を運営しており、製油所内の自家発電設備や残さ発電設備などを加えた発電能力は、新電力の上位に位置します。東燃ゼネラル石油、出光興産も共同で大規模な火力発電設備を新設する計画を進めています。


小売電気事業は、需要に合わせて供給を調整できる能力を備え、かつ、コスト競争力のある自前の供給力を持っていなければ、安定的に利益を稼げるとは思えません。電気事業全体の収益性が高くないこと、現在は電力各社の経営が歪められていること、地球温暖化防止対策の一環として火力発電の運営に影響を及ぼす制度が導入される可能性があることなども考慮して、慎重に事業計画を策定し運営していくことが必要と思われます。



 

元売りはセット販売の拡大が石油販売業の収益性悪化につながらないよう配慮すべき


来年4月には、都市ガスの小売が全面自由化されます。これによって、都市ガス、LPガスを問わず、ガス会社も自由に選べることが世間に広く認識されるようになり、近い将来、電気、ガス、石油、通信、不動産、小売など、生活に密着し、かつ、ほぼ毎月代金が決済される事業は、組み合わせて提供されるのが一般的になると予想されます。消費者にとってなじみのあるガソリンなどをセット販売の対象とする動きが広がる可能性もあるでしょう。すでに、割安な価格で物販を行うチェーン店がガソリンや灯油を安売りする動きも散見されます。このような事業者に著しく割安な価格で製品が卸供給されたり、SS側にセット販売の負担が押し付けられたりしないよう、元売各社は配慮する必要があると思われます。



 

石油販売事業者は取り組み次第で収益を拡大できる


石油販売事業・SSの経営環境は年々厳しさを増しています。石油製品の国内需要が減少傾向で推移しているうえに、ガソリンのマージンが縮小しており、SSのカーケア事業の収益も、カーディーラーやカー用品専門店チェーンの台頭、点検整備が難しい自動車の増加などの影響を受けて縮小しているからです。


残念ながら、自動車の燃費の改善や普及台数の伸び悩み、石油からガスや電気への燃料転換などによって石油製品の国内需要は減少傾向をたどると予想されます。カーケアサービスの一部も、次世代車の普及や自動車の電子制御化などによって失われていくと予想されます。しかし、車体、ウィンドウ、タイヤ、ホイール、車内などが大きく変化することはありません。洗車、タイヤ・ホイール交換、ボディ・ウィンドウ・ホイールなどのコーティング加工、塗装・傷・へこみなどのリペアは高収益化を図ることができます。自動車の登録台数は、近い将来、ドライバーの数の減少などを反映して、減少に向かうと予想されますが、SS数に比べると減少ペースは緩やかになると予想されます。これは、1SS当たりの自動車の数が増加することを意味します。


カーケア事業で高い収益を上げているSSの中に新しい業態が誕生しつつあることも確認できます。中古車の買い取り、中古車や新車の販売、カーリースなどの取り扱いが拡大した結果、カーディーラーのような業態を確立したSSです。このようなSSでは、車の取扱に関わる収益が拡大するに従って顧客数が増加し、SS業界全体では減少傾向にある自動車用潤滑油や点検整備を含めたカーケア事業全般の収益を拡大できているケースも少なくありません。このコラムで何度も提言させていただいていますが、カーケア収益は、取り組み次第で拡大することができます。制度・事業環境の変化を活かせるかどうかで将来は左右されると考えられます。



バックナンバー
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2016/02/04原油相場:当面軟調な展開が予想されるが、年半ば以降に60ドル近辺まで上昇へ
2016/01/01新たな競争時代を迎えて
2015/12/31元売りの再編・集約、新局面へ
2015/11/3電気事業への安易な参入は勧められない
2015/10/2燃料サーチャージの普及を
2015/9/6出光興産と昭和シェル石油が経営を統合
2015/8/3変化した石油業界の収益と原油市場との関係
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2015/6/2先行き不透明な原油需給 
2015/4/25電力・ガスシステムが始動 
2015/3/13まだ先行きが不透明なFEV、本格実用化間近のEV
2015/2/6原油価格は年後半に90ドル目指す
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2014/12/21 ガソリン市況を改善させたある元売の元経営トップの英断
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