㈱伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 伊藤 敏憲



日米で異なる自動車販売とガソリン需要との関係

伊藤 敏憲




米国では好調な自動車販売がガソリン需要を押し上げている



米国で自動車の販売が好調に推移しています。マークラインズが集計している米国の新車販売統計によると、15年4月~16年3月の新車販売台数は前年同期比4.8%増の1,760万台、特にスポーツ・ユーティリティ・ビークル(SUV)やピックアップトラックが主体の小型トラックが同12.9%増の995万台と高い伸びを記録しています。小型トラックの販売台数が高い伸びを示し始めたのは2012年の半ばで、それ以降、年々、小型トラックの販売構成比が上昇し、12年に48.8%だった小型トラックの販売構成比は15年に55.5%に上昇しました。2月の新車販売台数は前年同月比6.9%増、うち小型トラックは12.8%増、3月は3.2%増と11.4%増と傾向に変化は見られません。


ちなみに、米国では、新車販売、とりわけ小型トラックの販売状況は、景気のバロメーターの一つと言われています。この数字を見る限り米国の景気はまずまず好調な状態を維持していると考えられます。


なお、原油安を反映してガソリンの価格が安くなっていることも燃費の悪いSUVやピックアップトラックの販売が伸びている理由と考えられます。米国では、石油製品税が軽いため、原油価格の変動率とガソリン価格の変動率に大きな差が生じません。


自動車保有台数の増加と燃費の悪いSUVやピックアップトラックの構成比の拡大によって米国のガソリンの需要は押し上げられています。15年1月から10月のガソリン出荷量は前年同期比約4%増、異常暖冬の影響で15年11月~16年1月にかけて需要は伸び悩みましたが、16年2月以降は5%を上回る伸びを続けており、16年2月~4月の出荷量はは前年同期比約6%増となっています。


米国では、15年に石油需要が前年比2~3%増加しましたが、石油製品の総需要の過半を占めているガソリンが上述したような事情で増加していることが、その主な理由と考えられます。




 

日本では新車が売れれば売れるほどガソリン需要は抑制される



日本の自動車販売事情は米国とは異なり、ガソリン価格が低下してもなお、軽自動車やハイブリッドカーなど燃費の良い車種が新車販売の主流を占めています。景気がよくなると、普通車の販売が好調になる傾向は見られますが、普通車でもハイブリッドシステムを搭載した燃費の良い車が売れています。ちなみに、軽自動車が自動車保有台数に占める比率は過去20年間に7%から21%へ上昇しています。


これでは、新車販売が好調だったとしてもガソリン需要の増加にはつながりません。むしろ、廃車される車と新車との燃費の差分だけガソリンの需要は押し下げられることになります。日本の自動車保有台数は、2008年から2011年にかけて伸び悩んだ時期がありましたが、2012年以降は1%前後のペースで増加しています。保有台数の増加はガソリン需要を押し上げる効果を及ぼしているのですが、平均燃費の改善による効果の方が大きいため、ガソリン需要が減少傾向で推移しているのです。


なお、日本では、ガソリンに高い製品税が課せられているため、原油安の恩恵をドライバーが感じにくいことも米国との違いを生んでいる原因の一つと思われます。


いずれにしても、ガソリンの国内需要を石油業界が喚起することは難しいと考えられます。数量増効果が期待できないのであれば、安売りでシェアを競うのではなく、適正なマージンが確保できるよう、業界を挙げて取り組むべきと思われますが、石油業界関係者の皆様はどのようにお考えでしょうか。



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