㈱伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 伊藤 敏憲



石油産業がとるべき収益環境改善策

伊藤 敏憲




需要減少局面でとるべき国内市況の是正策


ガソリンの15年度の国内販売量は前年比0.3%増の5,312万7千klで5年ぶりに前年実績を上回りました。しかし、増加した理由は、14年4月に消費税が5%から8%に引き上げられた反動と、前年の需要が冷夏など天候要因で押し下げられていたためで、減少傾向に歯止めがかかったわけではありません。16年4~6月の国内販売量は前年同期の実績を1.0%下回りました。ガソリンなど石油製品の国内需要は、省エネ、燃料転換などによって、恒常的に減少し続けると予想されます。


需要が減少するのなら、石油業界が収益を改善するために取り組むべき対策は自ずと決まってきます。まず国内市況を是正するための対策を講じることです。具体的には、国内で流通している製品の大半を供給している精製・元売が、精製設備の集約を進めて供給能力を削減したり、製品輸出を拡大したり、石化製品などに生産をシフトしたりして、需給が緩みにくい事業環境をつくっていくこと、そして、精製・卸売・小売の各段階で適正なマージンが確保できるよう、業界を挙げて取り組むことです。


精製・物流部門を統合したり、合併したりすることは、需要に合わせて供給能力を削減していくために、有効な施策と考えられます。将来、見直される可能性がある業務提携では設備を廃棄する判断を行うことが難しいからです。



 

業転そのものが大きな問題ではない


販売業界の関係者の一部から、業転品をなくせ、あるいは、業転品をなくすことができないのなら自由に購入させろといった指摘がなされることがありますが、業転品は減らすことはできてもなくすことはできません。製造・流通の各段階における需給調整局面などにおいて発生するからです。系列販売のルールを逸脱した他系列からの購入を元売が容認できるとは思えません。業転品については、業界を挙げて流通量を縮小していく取り組みを続けることが妥当な対応と思われます。


また、事後調整については、すべての取引先に共通なあらかじめ公表されたルールに基づくインセンティブやバックマージンなどに問題があるとは思えません。このような価格調整は多くの業界において一般的に行われていることだからです。問題なのは、あらかじめ設定されたルールに基づかない恣意性があり、かつ、大きな価格差を生んでいる不合理な価格調整や経営支援均等の提供です。このような不合理なしくみは、採算を半ば度外視した価格競争を生み出す原因の一つになっているからです。



 

すべての元売が合理的な経営を実践すれば石油産業の収益環境は改善する


元売関係者の一部が、石油製品の市況が低迷している理由は、透明・公正な価格指標が存在しないこと、石油製品の流通構造が複雑であることなどにあると説明していますが、この説明は、元売の観点だけからみた解釈であり、業界全体でみると妥当な見方とは思えません。


仕切価格の決定方式の問題は価格指標にあるのではなく、不合理な商慣行にあると考えられます。ローリー物油槽所渡価格がバージ物製油所渡価格より安いことが問題視されていますが、コストだけからすると不合理なローリー物がバージ物より安い理由は流通段階で価格の調整がなされているからです。商慣行が価格指標を歪めていると考えられるのです。


流通構造や、事業者及びSSの数と石油販売業界の収益環境との間に関係がないことは、販売事業者数は80年代から、SS数は90年代半ばから減少し続けており、また、元売の販売子会社や出資特約店の販売シェアが拡大するなど、元売の影響力が強くなる方向に流通構造が変化しているにもかかわらず、市況の低迷が繰り返されていることからみて、妥当な解釈ではないことが明らかです。流通構造上の問題をあえて指摘するとしたら、市況形成において大きな影響力を持っている元売がシェア重視の販売政策を続けていることにあると考えられます。要は、すべての元売が、精製、卸売、販売の各段階において、合理的な経営を実践すれば石油業界の収益環境は改善すると考えられます。



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