㈱伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 伊藤 敏憲



JXTGグループは石油業界の収益改善を先導できるか

伊藤 敏憲




JXとTGが経営統合に最終合意


JXホールディングス(以下JXHD)と東燃ゼネラル石油(以下「TG」)が、16年8月31日に経営統合契約等を締結し、17年4月1日にエネルギー事業を全面的に統合することについて最終的な合意に達しました。今年12月21日に開催予定の両社の臨時株主総会による承認、および、公正取引委員会等の当局による許認可の取得を経たのち、両社は、来年4月にJXTGグループとして経営を統合することが決まったのです。同時並行的に進められていた出光興産と昭和シェル石油の経営統合計画は、出光創業家の反対表明によって、事実上、暗礁に乗り上げた形になっていますが、少なくとも、JXTGグループの誕生によって石油業界の再編・集約は大きく進展することになったのです。



 

両社が標榜するコスト削減・効率化目標は十分に達成可能だが…


2010年に新日本石油と新日鉱ホールディングスが経営を統合してJXグループが誕生した際に、各方面から経営統合による効果や影響に関するご質問を頂戴しました。私は、両社が経営統合前に掲げていた収益改善効果のうち、コスト削減・効率化に関しては十分に達成が可能ですが、販売部門の経営政策が変わらない限り、同社の系列販売業者を含め、石油販売業界の収益性が改善することはないとの見解を示させていただきました。この見通しはほぼ正確だったと思われます。


今回も同じ見解を示させていただきます。JXHDとTGは、経営統合効果について、「経営統合後5年以内に1事業年度あたり連結ベースで1,000億円以上の収益改善を達成する」と説明しています。確かに、石油精製、石油製品の物流、石油化学製品などの製造・物流部門の収益性は、設備の集約、原料調達・生産得率・設備運用の最適化、管理間接部門の集約などによって確実に改善すると見込まれますし、管理間接部門のコストも集約効果や業務の効率化などによって着実に削減できると予想されます。これらによって年1,000億円以上の収益性の改善は十分に図れると思われます。なお、実際の業績は、原油、天然ガス、銅などの国際市況、為替レート、景気動向といった外部環境の変化や、同業他社との競合などによる影響を受けますので、単一年度で見ると、収益性の改善分だけ利益が増加するかどうかはわかりません。


同社にとって最大の課題は、収益改善効果1,000億円の中には含まれていない系列特約店を含む販売部門の合理化・効率化をどれだけ積み上げることができるかどうかでしょう。残念なことに、石油業界において90年代以降に起きた経営統合で、どのグループにおいても、この部門の収益改善だけは達成されてこなかったという事実があるからです。



 

競争のゆがみを正していくことが必要


石油製品の国内需要が減少し続ける中で取り組むべき対策は、まず国内市況を是正するための対策を講じることです。そのためには、精製設備の集約を進めて供給能力を削減したり、製品輸出を拡大したり、石化製品などに生産をシフトしたりして、需給が緩みにくい事業環境をつくっていくとともに、精製・卸売・小売の各段階で適正なマージンが確保できるよう、商慣行の是正などに業界を挙げて取り組むこと。すべての取引先に共通なあらかじめ公表されたルールに基づくインセンティブやバックマージン以外の事後調整を撤廃することは、必要条件でしょう。特に問題なのは、あらかじめ設定されたルールに基づかない恣意性があり、かつ、大きな価格差を生んでいる不合理な価格調整や経営支援等の提供です。このような不合理なしくみは、採算を半ば度外視した価格競争を生み出す原因になったり、競争をゆがめ、本来なら淘汰されるべきSSや事業者を存続させたり、逆に勝ち残るべきSSや事業者を追いやったりしているからです。


JXHDとTGの合意書の中には、石油業界の収益環境改善のきっかけとなり得る対策が少なからず盛り込まれています。JXTGが業界をより良い方向にリードしていくものと期待されます。


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