㈱伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 伊藤 敏憲



石油販売業界の変わらない悪弊を断てるか

伊藤 敏憲




石油販売業界は変わっていない


かつて石油販売業界に従事されていた方々とお話しすると、決まりごとのように評される言葉があります。「石油業界は変わりませんね」の一言です。そして、ほとんどのケースで石油業界を揶揄する意味で発せられたこの言葉とともに、「異常な安売」、「業転」、「事後調整」、「採算販売意識の欠如」などの悪弊が指摘されます。石油販売業界においては、これらが本質的な問題と思われます。




ほぼ適切に行われている需給面への対応


国内需要の減少が続くと予想される中で取り組むべき対策は、まず、業界を挙げて、過剰供給や過当競争などが起きにくい供給・販売体制をつくっていくことです。そのためには、需要の減少に合わせて、精製設備の集約を進めて供給能力を削減したり、製品輸出を拡大したり、石化製品などに生産をシフトしたりして、需給が緩みにくい事業環境をつくっていくとともに、常に需給バランスの適正化を図っていく必要があります。


これら需給面での対応は、ほぼ適切に行われていると考えられます。製油所の数はピーク時の37か所から22か所に集約され、原油処理能力は日量594万バレルから日量382万バレルへ35%余り削減されています。石油製品の輸出も拡大しています。パラキシレンなどの石油化学製品への生産シフトも着実に進んでいます。ただ、能力の削減は段階的にしか行うことができませんので、需給が緩みやすくなったり、引き締まりやすくなったりして、その都度、マージンが縮小したり、拡大したりが繰り返されているのです。今後も同様の状況が繰り返されると予想されます。




課題は販売業界の悪弊の根絶


問題は業界関係者のほとんどが指摘している業界の悪弊を断つことができるかどうかでしょう。


業転品は、需給調整など様々な理由で発生しますので、完全になくすことはできませんが、需給バランスさえ崩れていなければ、著しく割安な業転品が大量に流通することはありません。需給が緩めば、業転品の価格は下がって流通量も増加し、需給が引き締まれば、業転市況は上昇し流通量も減少すると理解すべきでしょう。


業転問題よりも重要なのは商慣行の是正です。すべての取引先に共通な公表されたルールに基づく合理的な幅のインセンティブやバックマージンは、多くの業界で行われている正常な商慣行ですので、水準が適正なら問題はありません。ところが、石油業界において散見される予め設定されたルールに基づかない恣意性があり、かつ、大きな価格差を生んでいる大幅な事後調整や巨額の経営支援等の提供は廃絶していかなくてはいけません。このような不合理な商慣行が採算を半ば度外視した価格競争を生み出す原因になったり、販売事業者間での競争をゆがめ、本来なら淘汰されるべきSSや事業者を存続させたり、逆に勝ち残るべきSSや事業者を追いやったりしているからです。


石油販売業界の収益性が改善しないのは、業界関係者が問題として指摘することがある「業転問題」ではなく、「信頼性の高い価格指標の有無」や「複雑な流通構造や事業者・SS数の多さ」などが原因ではありません。



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