㈱伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 伊藤 敏憲



OPECとロシアの協調減産が
原油価格に与える影響は限定される

伊藤 敏憲



OPECが協調減産に合意、ロシアも追随へ

11月30日に開催されたOPEC総会で9月末の臨時総会で暫定的に合意された内容に即した日量120万バレルの協調減産が合意されました。ロシアもOPECの同時減産の呼びかけに応じて日量60万バレル程度の減産に踏み切ると予想されます。

原油相場は、臨時総会後に一時上昇しましたが、その後、世界的な景気の低迷を背景にした需要の伸び悩みによって原油の需給調整が進まなかったこと、OPEC総会で合意が得られないのではないかとの思惑が広がったことなどから、再び値を崩していました。

  NYMEXのLight Sweet Crude Oil(WTI原油)の期近先物価格の引け値は、6月に51ドル台まで上昇した後、8月2日に40ドルを割り、10月に51ドル台まで上昇し、11月には43ドル台まで値を崩していましたが、OPEC総会での減産合意を受けて急反発しました。11月30日の引け値は1バレル49.44ドルと前日に比べて4.21ドル上昇し、12月2日には51.68ドルと年初来の高値を記録しました。

しかし、原油相場がこのまま上昇を続けて50ドル台を後半まで上昇する可能性は低いと思われます。これは、需給が引き締まっておらず、産消国ともに高水準の在庫が積みあがった状態のままだからです。


OPECが協調減産を実施した局面で原油価格が上昇した例は少ない

 OPECとロシアが協調減産を実施するのは2001年以来15年振りのことですが、過去にOPECが加盟国の合意による協調減産を実施した局面で原油価格が上昇したケースはほとんどありませんでした。これは、OPECが協調減産を検討したり実施したりした局面では、スイングプロデューサーの役割を担っているOPECが減産を検討しないといけないほど需給が緩んでいたからです。このため、OPECが減産を実施したにも関わらず需給が短期間で引き締まったケースは過去には見られませんでした。また、OPEC加盟国が合意内容通りに減産を実施しなかったこともありました。原油価格の低迷局面で収入の減少を補うためには生産量を増やすことが短絡的な対策になるからです。これも過去に原油価格が上昇しなかった理由の一つになっていました。


需要の伸びが回復しなければ原油価格は上昇しにくい

今後は、中国をはじめとする新興国および発展途上国で石油需要がどの程度増加するか、先進諸国の原油需要が回復するか、OPEC加盟各国が合意内容通りに減産を実施するか、さらに、ロシアなど他の産油国が減産を実施するかなどによって原油の需給は左右されることになります。もちろん、減産によって需給調整が進めば、原油価格は上昇しやすくなりますが、原油価格が上昇すると生産量が拡大する可能性もあります。

例えば、原油価格が1バレル50ドルを上回ってくると北米のシェールオイルなどの生産量が回復に向かい、1バレル70ドルを上回ると原油価格が急落した局面で世界各地で大幅に削減された開発投資が再び拡大に向かうと予想されます。

なお、米国の原油生産量は、15年6月初旬のピーク時点では日量961万バレルに達していましたが、16年11月末現在の生産量はピーク時点に比べて約90万バレル少ない日量870万バレルまで減少しています。原油価格が70ドル程度まで上昇すると、米国の原油生産量が元に戻ると今回のOPECの減産分の4分の3を打ち消してしまう可能性があるのです。さらに、カナダのオイルサンド、ブラジル沖の深海油田など採算の悪化によって生産量が減少している他地域の高コストプロジェクトの生産量も回復に向かうと予想されます。

  原油価格が本格的に上昇するためには過剰在庫の調整が必要と思われます。世界の原油需要は1年間に日量100万バレル~200万バレルのペースで増加する見通しですが、そのためには、OPECやロシアなど主要産油国が減産体制を維持したとしても、まだ半年から1年程度の期間を要すると見込まれます。






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