㈱伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 伊藤 敏憲



冬季は天候が原油市況に影響を及ぼしやすい

伊藤 敏憲



米国の暖冬が原油市況の下げ要因に

米国の天候は石油需要に影響を及ぼし石油製品や原油の市況を左右することがあります。冬季は特にこの傾向が強くなります。暖房・加熱用燃料の需要が気温・水温の影響を直接受けるほか、自動車用燃料もエアコンによるエンジン負荷、道路状況、自動車の使用頻度などが気温の変化や降雪の影響を受けるからです。

昨年の米国は異常暖冬でした。AccuWeather.comのデータによると、ニューヨークの15年12月の平均気温は平年に比べて8℃高い14℃、16年1月は1℃高い5℃、16年2月は2℃高い7℃で、冬季(15年12月~16年2月)の平均気温が平年を約4℃上回っていました。米国だけでなく、欧州やアジアも平年に比べて暖かい天候が続き、わが国でも、気象庁のデータによると、昨年冬季の東京の平均気温は81年~10年の平均を約2℃上回っていました。これが、石油需要を抑制し、原油市況が昨年2月に03年以来の安値を記録した原因の一つになっていたと考えられます。

暖冬の影響をもっとも強く受ける暖房油は、想定外に需要が減少したことから需要期に在庫が積み上がってしまい、生産・出荷を抑制せざるを得ない状態に陥ったため、市況が崩れ、需要期の冬季にガソリンより安い価格で取引されるようになっていました。米国の石油製品市況に季節性がみられ、冬季はヒーティングオイルがガソリンより高くなり、夏季はガソリンの方がヒーティングオイルより高くなることが多いのですが、昨年は冬季にヒーティングオイルがガソリンより安値で取引されていました。このような状況になったのは原油市況が低迷していた02-03年シーズン以来13年ぶりのことでした。

米国の今冬の天候は、11月~12月は世界の主要国の平均気温がほぼ平年並みでしたが、1月は平年を上回っていました。ニューヨークの16年12月の平均気温は7℃でほぼ平年並みでしたが、17年1月は6℃と昨年より1℃高く平年を約2℃上回っていました。これが、北米でヒーティングオイルやガソリンの需要を押し下げ、石油製品及び原油の需給調整が遅れている原因の一つになっていたと考えられます。

ヒーティングオイルは。需要期には気温が数日間下がったり上がったりするだけで在庫量が大きく変動します。このため石油製品や原油の市況を予測する上で、冬季は米国の天候の変化に注意を払う必要があるのです。(下記のグラフを参照)



わが国でも天候は石油製品の市況に影響を及ぼしている

わが国でも天候が石油製品の市況に影響を及ぼすことがあります。今年は、地域間で天候に大きな差が見られ、12月は、北海道、東北、北陸などの寒冷地では平年に比べて冷え込みが厳しく積雪量も多い地域が多くなっています。これが昨年11月~12月に灯油市況が上昇した理由になっていたと考えられます。



 

暖冬と地球温暖化は別物だが…

ちなみに、暖冬と地球温暖化が同じように扱われることがありますが、地球温暖化は、地球表面の大気や海洋の温度が長期的に上昇傾向で推移する現象のことで、年平均気温の変化は100年間で約1℃程度、異常暖冬とは全く次元の異なる話です。

ただし、温室効果ガスの濃度の上昇が、豪雨、渇水、猛暑・冷夏・暖冬・厳冬、台風の大型化など、異常気象の規模や発生頻度が高くなっている理由と指摘する向きもあります。過去には、巨大ハリケーンの襲来によってメキシコ湾の原油・天然ガスの生産や出荷が滞ったり、製油所が被災したりして、石油製品及び原油の市況が大きな影響を受けたこともあります。比較的短期間の原油及び石油製品市況を予想する上で天候をチェックすることは欠かせません。


ニューヨークの気温の推移(2015-2016) 
 
ニューヨークの気温の推移(2016-2017) 



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