㈱伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 伊藤 敏憲



米国の石油需給統計を読み解く


伊藤 敏憲


米国では原油及び石油製品の需給調整が進捗


米国の原油在庫は、14年12月から今年3月にかけて、それぞれの時期に過去最高を記録するなど過剰在庫が積みあがった状態で推移してきましたが、今年4月に減少傾向に転じ、7月下旬に一時前年同期の水準を下回りました。8月中旬の水準はまだ平年に比べると高いものの過剰在庫は徐々に解消しつつあり、需給調整が進んできたとみることができます。

米国の原油生産量は、原油価格の下落・低迷による採算の悪化を背景に15年7月から16年6月にかけて減少しましたが、原油価格の底入れ、生産コストの低減などにより、16年7月以降は増加傾向で推移し、8月初旬の生産量は950万BD(日量バレル)を超え、15年6月記録した近年のピーク生産量(961万BD)に近づいています。

一方、原油輸入量は、15年後半から今年初めまで前年の水準を上回って推移してきましたが、その後、減少傾向に転じ、2月以降は前年実績を下回るようになりました。7月初旬の輸入量は700万BD強で、シェールオイルが増産される前の2007年平均の1,002万BDに比べると3割前後、昨年末と比べても1割前後減少しています。

ただし、米国の石油需要は依然伸び悩んでいます。石油製品需要の約半分を占めるガソリンの出荷量が、昨年10月から前年実績を下回る傾向にあるからです。自動車販売台数の伸び鈍化、平均燃費の改善などがその理由と考えられます。ガソリン在庫は、昨年はそれぞれの時期に過去最高を更新し、今年1月から6月にかけてもほぼ前年と同じ高水準で推移してきましたが、6月中旬から7月末にかけて減少し、7月下旬には平年並みの水準まで調整が進んでいました。しかし、8月に増加に転じ、8月中旬には同時期として過去最高水準まで積みあがっています。

ジェット燃料などのKeroseneは、需要が拡大傾向で推移しており、8月初旬現在で在庫に過剰感はありません。

軽油、ヒーティングオイルなどのDistillateは、冬場に気温が高かったことなどから需要が伸び悩みましたが、3月以降は需要が好調に推移しています。Distillateの在庫は、昨年は年間を通じて同時期としての過去最高を記録し続けていましたが、今年2月下旬から5月にかけて減少し、3月に前年同期の水準を下回るようになり、8月初旬現在の水準はほぼ前年並みとなり、やはり過剰感はなくなっています。

上述した需給の動きから、米国では、需要が伸び悩んでいるガソリンを除いた石油製品、及び原油において、輸入の減少や供給の適正化によって需給調整が進んできていると読み取ることができます。


原油価格は当面膠着状態で推移すると予想

ただし、まだ原油価格を力強く押し上げるような状況ではありません。なぜなら、仮に、原油価格が1バレル50ドル前後で推移すると米国の原油生産量は緩やかに増加すると予想され、原油価格がさらに上昇すると停止しているリグの再稼働が広がり、米国の原油生産量は1,000万BDを上回る可能性があるからです。米国内の石油掘削リグの稼働基数は、8月中旬時点で768とピーク(14年10月中旬1,609)の半分以下にとどまっていますので、原油価格の戻り方しだいによって、リグの稼働基数が2倍以上に増加することが予想されるからです。

さらに、ガソリン需要が伸び悩んでいることを考慮すると、原油在庫が再び増加したり、原油輸入量がさらに減少して国際需給の緩和要因として働いたりして原油価格の上昇を抑制すると考えられます。

米国の石油需給統計からは、需給調整が進捗したことから、原油価格は底堅くなったものの、当面は上値も限られると予想されるのです。




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