㈱伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 伊藤 敏憲



16年~17年の石油製品の国内市況上昇理由

伊藤 敏憲


16年3月以降に大きく上昇した石油製品の国内市況

 

石油製品の国内市況が上昇しています。資源エネルギー庁から公表されている給油所小売価格調査のデータによると、レギュラーガソリンの17年12月25日の全国平均価格(消費税、揮発油税及び地方揮発油税込み)は141.7円/㍑で、前年同期(16年12月26日)の130.3円/㍑に比べると11.4円/㍑、16年に最も価格が低下した3月上旬の112.0円/㍑と比べると29.7円/㍑上昇しています。灯油の全国平均価格も同様で、店頭小売価格(消費税込み)は、17年12月25日が84.4円/㍑、16年12月25日が76.2円/㍑、16年3月初旬が61.0円/㍑と、前年同期に対して8.2円/㍑、前年の最安値と比べると23.4円/㍑上昇しています。16年の最安値から昨年末にかけての小売価格の上昇率は、レギュラーガソリンが27%、灯油が38%に及んでいます。


石油製品市況の上昇理由の一つは原油価格の上昇で、これだけで説明される向きも少なくありませんが、理由は他にもあります。小売価格には、需給や石油事業者の経営政策などの影響を受ける精製・販売マージンの変動による影響も反映されるからです。

 

原油輸入価格の構成要素と16年~17年の変化

 

わが国では、原油の99.7%を輸入に依存していますので、原油のコストはほぼ輸入コストに拠りますが、原油の輸入コストは、ドルベースでの原油価格だけでなく、為替、タンカーフレート、金利などの変動による影響を受け、原油の調達先や油種構成の差も反映されます。原油の取引価格は油種によって異なりますが、原油の国際指標の一つとされるNYMEXのLight Sweet Crude Oil(一般に代表油種の「WTI原油」と称される)の先物価格とわが国が主に輸入している中東産原油の取引価格との間には大きな価格差が生じることがあります。16年は中東産原油の方がWTI原油より割安でしたが、17年半ば以降は割高になっています。これはOPECの減産とシェールオイルの増産による需給差、サウジアラビアの政治情勢など地政学リスク、取引市場要因などを反映した変化と考えられます。


上述した16年3月、16年12月、17年12月の原油輸入(CIF)価格は、16年3月が22.9円/㍑、16年12月が33.2円/㍑、17年12月が推定41円/㍑でした。この3か月の為替、タンカーフレート、金利などの変動幅は大きくありませんでしたので、原油コストの増加は主にドルベースの原油価格の上昇によると考えられます。


なお、タンカーフレートの指標であるWSは、16年~17年に高値95、安値33.5と大きく変動していましたが、上述した3か月の高値は、16年3月95、16年12月90、17年12月70と大きな差はありませんでした。

 

精製・マージンの構成要素と16年~17年の変化

 

一方、精製・販売マージンは、石油精製、自家燃料、物流、石油精製・元売会社の管理間接部門、卸売事業、小売事業などのコストと、石油精製・元売・販売各段階の事業者の利ざやによって構成され、製品市況は、卸売市況と小売市況に分けることができます。


コスト、市況ともに、事業者、地域、販売ルートなどによって異なっていますので、一概に評価することはできませんが、全国平均価格をベースにしたレギュラーガソリンの精製・販売マージンは、16年~17年にかけて拡大傾向で推移していました。給油所店頭小売価格と原油輸入価格との差から計算されるマージンは、16年3月25.2円/㍑、16年12月28.8円/㍑、17年12月(推定)33円/㍑と拡大しています。


この間のマージンの拡大は、石油精製能力の削減による国内需要と精製能力とのギャップの縮小、17年4月にJXエネルギーと東燃ゼネラル石油の統合によって誕生したJXTGエネルギーなどの精製・元売各社の供給政策の見直し、製品輸出の拡大などを背景にした需給の引き締まりと、JXTGエネルギーが主導した採算販売の徹底によってもたらされたと考えられます。


すなわち、16年3月以降のガソリン国内市況の上昇は、主に、ドルベースでの原油価格の上昇と、石油精製・元売の経営施策によってもたらされたと考えることができるのです。





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