㈱伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 伊藤 敏憲



石油業界が好収益を維持するための課題



伊藤 敏憲


石油業界の収益環境は17年度春以降良好に推移


石油業界の収益環境は17年春以降良好に推移しています。ガソリン、灯油、軽油などの国内のマージンが高水準で推移しているからです。


マージンが改善した最大の理由は、17年4月にJXエネルギーと東燃ゼネラル石油の統合によって誕生した石油製品の国内出荷シェア約5割を占めるJXTGエネルギーが、業転市場や商社ルートへの製品供給を絞り込んで需給を引き締めて卸売市況の是正に取り組むとともに、販売子会社や特約店に採算販売を徹底して小売市況の是正にも積極的に取り組んだからでしょう。


また、17年3月末に期限を迎えたエネルギー需給構造高度化法の二次告示に対応するため、精製・元売各社が原油処理能力を削減したことで、精・販ギャップが縮小し、需給が引き締まりやすくなったことも奏功したと考えられます。


そして、原油価格が17年半ばから18年秋にかけて上昇傾向で推移したことで卸売マージンの拡大、石油開発事業の収益拡大、在庫評価による利益のかさ上げが生じたこともあり、石油各社は17年度に空前の好業績を達成し、18年度上半期も好業績を確保していました。石油販売事業者の経営環境も全国的に良好に推移しています。

当面、石油業界の収益環境は良好に推移すると予想されます。石油製品の国内需要は引き続き減少傾向で推移する見通しですが、JXTGエネルギーが石油製品の採算販売の方針を徹底し続けていることに加え、19年4月に出光興産と昭和シェル石油の経営統合によって石油製品の国内出荷シェアの約3割を占める出光昭和シェルが誕生することで、需給の引き締め、過当競争の是正などが図られやすい状況になると見込まれるからです。



収益環境の悪化を避けるための対策を講じつつ抜本的な経営改革を


石油業界の収益環境が悪化するリスクは複数想定されます。石油製品の需要の減少による需給の悪化、元売の経営政策変更による販売競争の再燃、石油製品の海外市況の悪化、原油価格の下落、石油化学製品の市況悪化などです。

 収益環境の悪化を防ぐためには抜本的な需給対策を講じる必要があると思われます。例えば、高度化法の二次告示にほとんどの元売が公称能力の削減で対応しましたが、需給対策とコスト削減・効率化を同時に進めるためには、精製設備の廃止、製油所の統廃合、外国企業との共同事業化等による供給力の海外シフトなどを図る必要があります。


JXTGエネルギーが先導した市況是正策によって石油販売業界の収益環境が元売の対応によって大きく左右されることが証明されました。したがって、元売各社が販売量の拡大に拠らずに利益の維持・拡大に取り組む姿勢を続けるかどうかも重要です。


一方、石油販売事業者が自ら経営改革に取り組みことも重要です。カーケア、TBASP商品の販売、自動車の買取・販売、カーリースなどの関連事業は取り組み次第で拡大できます。ただし、SS関連事業では、事業内容の変化、新規事業の開発、新しい資機材の開発、事業支援ツールの提供などが日々進められています。新しい取り組みでは、先んじることが成否を分けるケースが多いのですが、変化を拒んだり、既存の取引先との関係を重視しすぎたりするあまり、新たな収益の獲得機会を逸する事例なども見受けられます。


精製・元売、販売事業者ともに、収益環境が良好な時にこそ、抜本的な対策を講じて、将来に向けた積極的な経営改革に取り組むことが必要なのです。



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