㈱伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 伊藤 敏憲



生産・供給体制再構築に向けた具体策を示しているのはJXTGだけ



伊藤 敏憲


石油製品のマージンを維持・改善するためには適正な需給ギャップを実現する必要がある



原油処理量と原油処理能力から計算される設備利用率の09年度から18年度にかけての10年間の平均は81.6%、点検・補修等で停止している設備の能力を除いた実稼働率の平均は89.4%でした。最も実稼働率が高かったのは17年度で95.1%、18年度も93.8%でこの2年間はほぼフル稼働といえる状況でした。17年度から18年度にかけて高い精製・販売マージンが維持された要因は、17年4月にJXホールディングスと東燃ゼネラル石油との統合によって誕生したJXTGエネルギーが、業転市場や商社ルートへの製品供給を絞り込むとともに、販売子会社や系列特約店に採算販売を徹底し続けたことでしたが、供給能力と需要とのギャップが小さかったこともその理由の一つと考えられます。


 石油製品の国内需要は減少傾向で推移すると予想されます。そのような需要環境下で良好な収益環境を維持し続けるためには、製品輸出の拡大、石化製品への生産シフトなどに取り組むとともに、大きな過剰能力を抱えないように精製設備の集約を適時進めていく必要があります。


17年3月末に期限を迎えた高度化法(エネルギー供給構造高度化法)2次告示への対応のほとんどが公称能力の削減によってなされていますので、複数の製油所において本来の設備能力と届出能力との間には大きなギャップが存在しており、その規模は業界全体で40万B/Dを超えています。設備を廃棄しない公称能力の削減は、精製コストの低減にはつながりませんので、収益体質を抜本的に改善するためには、かねてより取り組んできた製品輸出の拡大、石化製品への生産シフトなどをさらに進めるだけでなく、需給の引き締めとコストの低減を同時に実現できる「精製設備の廃棄」、「製油所の廃止」、「輸出専用設備化」などにも取り組む必要があると考えられます。



生産・供給体制再構築に向けた具体策を公表済みなのはJXTGだけ


現時点で具体策を公表しているのはJXTGエネルギーだけです。JXTGは、生産・供給体制を再構築するため、①室蘭製油所の生産停止、石油製品物流拠点化(19年4月実施)、②ベトナム・ペトロリメックス社と麻里布製油所における協業の検討(18年4月覚書締結)、③中国石油国際事業日本社との合弁会社の協業運営対象を大阪製油所(原油処理能力11.5万B/D)から千葉製油所(同12.9万B/D)に変更の上、協業継続を検討(19年7月公表)、④大阪製油所の精製機能停止、発電事業所化(20年10月予定)などに取り組んでいます。これらの対策が実現できれば、JXTGの収益力は着実に向上し、石油業界の収益環境にも好影響を及ぼすと見込まれます。



向こう数年間の収益環境は元売各社が生産・供給体制再構築に向けた具体策を実践できるかどうかによって左右される


出光昭和シェルは、まだ生産・供給体制を抜本的に強化するための具体策を示すことができていません。経営統合で先行し収益力が着実に高まっている上に、生産・供給体制再構築に向けた将来戦略を打ち出しているJXTGに対抗していくためには、現在公表されている経営合理化計画の前倒しと深堀、販売並びに生産・供給体制の再構築に向けた具体策を講じていく必要があると思われます。


コスモエネルギーは、キグナス石油への供給が始まる20年1月に自社の供給能力に不足が生じると予想されます。このため、当面は不足分をどのように調達するかが課題になります。仮に不足分の一部を海外から調達するようになると、国内供給力がその分増えますので、短期的には石油業界全体の収益環境にマイナスに働く可能性があります。


JXTGが公表している対策を実践できるか、出光昭和シェル、コスモエネルギーが業界動向も見据えた収益改善策を打ち出せるかどうかによって、石油業界の向こう数年間の収益環境は大きく左右されることになると予想されます。



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