活ノ藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 伊藤 敏憲

不当廉売は何も生み出さない


初めて実施された公取委によるガソリンの不当廉売に関わる立ち入り検査

 
公正取引委員会(公取委)が4月10日、福井県の一部地域でレギュラーガソリンを不当に安く販売し、競合する店舗の営業活動を困難にした疑いがあるとして、独占禁止法(不当廉売)の疑いで三谷商事と同社子会社で石油販売のミタニなど約10カ所に立ち入れ検査に入りました。

 ガソリンの小売りを巡っては、これまでにも公取委に対して不当廉売の疑いがあると報告(申告)されたケースがありましたが、立ち入り検査が実施されるのは初めてのことです。

 また、公取委が、前回、不当廉売の立ち入り検査を実施したのは1982年に牛乳の小売りを巡って行って以来、実に30年ぶりのことです。

 公取委は、「ガソリン等の流通における不当廉売,差別対価等への対応について」というガイダンスを示しています。これによると、問題となる廉売の態様としては「供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給」する場合と,「その他不当に低い対価で供給」する場合の2つがあり,このような廉売によって,「他の事業者の事業活動を困難にするおそれ」がある場合に不当廉売に該当するとされています。

 すなわち、公取委が立ち入り検査を実施したということは、三谷商事の系列SSの販売行為が他の事業者の事業活動に悪影響を与えていたと判断されたということであり、三谷商事とその販売店がコストを度外視した安売りを行っていたか、あるいは、三谷商事に不当に低い対価で供給していた卸売事業者が存在していた可能性が高いということでしょう。まだ、立ち入り検査が実施されただけですので、独占禁止法に違反する行為が行われていたのかどうかは判りませんが、疑われる商行為が行われたこと自体を関係者の皆様は猛省していただきたいと思います。

 
ブランドの提供者は安売りの是正に取り組む責任がある

 
規格化された必需品は、価格が下がっても需要が大きく増加することはありません。安売りは事業の価値を低くするだけで、結果としては何も生みださないのです。

 もし、元売のサインポールすなわちブランドを掲げているSSで安売りが行われていたのなら、そのブランドを提供している元売が安売りの是正に取り組まなくてはいけません。ブランドの価値を押し下げる行為だからです。それができないのなら、ブランドの価値が低下した分、その影響を受けた事業者に対する仕切価格を引き下げなくてはいけないのではないでしょうか。

 石油業界の特性からみて、年間を通じてスポット取引を完全になくすことはできないでしょうが、元売はスポット取引価格と同様の価格で流通している量を減らすことができるはずです。国内に流通している石油製品の大半は元売りを介して供給されているからです。


ガソリンの小売価格は7週連続で上昇したが…

 
資源エネルギー庁(今年3月末までは石油情報センター)から公表されている給油所市況調査によると、昨年10月から今年2月上旬までg143円前後で安定的に推移してきたレギュラーガソリンの小売価格が2月中旬に上昇に転じ、4月初には158円30銭まで15円余り上昇しました。

 最大の理由は、ガソリンの卸売価格が上昇したからです。原油価格は、原油価格の高騰と円高によって、2月初旬から3月中旬にかけてg12円程度上昇していますが、卸売価格の上昇幅は原油価格の上昇幅を上回っています。卸売マージンは改善していますが、小売り段階でのマージンの改善幅は小幅にとどまっています。小売価格高騰の影響もあって販売量は伸び悩んでいますし、カーケア収益にも悪影響が生じていますので、販売事業者の経営内容は依然厳しい状態のままです。

 石油業界全体の健全化を図るためには、先月のコラムでも指摘させていただきましたが、市況改善メリットの一部が販売業者に分配されるような仕組みを作ることが必要と思われます。

 ただし、厳しい経営環境下でも着実に利益を稼ぎ出している販売店が少なからず存在します。工夫と努力次第で収益を大幅に拡大できるカーケアなどの油外事業の収益の厚みを増すことができるかどうかがポイントであり、現時点ではg7〜8円のコストで利益を稼ぐことができる体質になっているかどうかが成否の境目になると予想されます。

バックナンバー
2012/03/20 仕切り価格算定方式の修正を提案
2012/02/20 変化の兆し
2012/01/20 「新年の取り組みいかんで将来が大きく左右される」



会社案内個人情報著作権リンクポリシー
本ページに記載の記事・写真などの無断転載を一切禁じます。
著作権は泣}ジカルネットワークまたはその情報提供者に帰属します。

Copyright (C); 2012,
Magical Network Inc. All Rights Reserved.