活ノ藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 伊藤 敏憲

固定価格買取制度の開始で太陽光発電の導入さらに加速へ


再生可能エネルギーの普及を推進する固定価格買取制度が7月にスタート

 「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」が今年7月にスタートします。

 再生可能エネルギーは、発電時に二酸化炭素をほとんど排出しないか、発電時には排出するものの、自然界で繰り返し起こる植物による二酸化炭素の吸収などによって相殺されるため、地球環境にやさしいエネルギーです。水力、風力、太陽光、太陽熱、地熱、バイオマス発電などがこれに該当しますが、今年7月に導入される買い取り制度の対象は、風力、太陽光、出力3万キロワット未満の小規模水力、地熱、バイオマス燃料によって発電した電気が対象になります。

 固定価格買取制度は、再生可能エネルギーによって発電された電気を、電源を設置した個人あるいは事業者が投資コストを十分に回収できる高い価格で電力会社に一定期間買い取らせる制度です。電力会社が買い取りに要した費用は「賦課金」として電気料金に上乗せされて国民全体で負担することになります。

 再生可能エネルギーの導入・利用を拡大するとエネルギーの自給率を高める効果も期待できます。

 エネルギーは、あらゆる経済活動や暮らしになくてはならない最も重要な基礎資材の一つですが、わが国は、経済規模や人口に対して、石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料の国内産出量が乏しく、水力や地熱など既存の自然エネルギーによる発電量も限られていますので、エネルギーの自給率がわずか4%という低い率にとどまっていました。再生可能エネルギーの利用を拡大すると、エネルギーの供給安定性を高める効果も期待できるのです。

 

買取価格・期間は大方の予想を上回る好条件になる見通しに

 買取価格と期間は、調達価格等算定委員会で審議を行い、その意見を受けて、経済産業大臣が告示し、原則として毎年見直されることになっています。その初年度の条件のたたき台となる委員会案が先ごろ公表されました。

 その内容は、太陽光発電が、主に住宅用が対象となる10キロワット未満が1キロワットアワー当たり42円(税抜価格、以下同様)で期間が10年、10キロワット以上が40円で20年。風力は、20キロワット未満が55円、20キロワット以上が22円で、期間はいずれも20年です。大方の予想に比べて、価格は高く、かつ、期間が長く、事業者側の要望がほぼそのまま反映されたとの印象があります。

 太陽光発電については09年11月から自家消費して余った電気を電力会社に買い取らせる「余剰電力買取制度」が運用されています。昨年度から今年6月までの買取価格は、住宅用の10キロワット未満が1キロワットアワー当たり42円、10キロワット〜500キロワットが40円、工場・事業所等の500キロワット未満が40円でした。500キロワット以上の大規模な設備では、電力会社と相対交渉で買取価格等の条件が決定されていました。

 また、風力、地熱など他の再生可能エネルギーによって発電された電気についても買取価格等は相対交渉で決められていましたが、その買取価格は前述した水準に比べると割安なケースが多かったもようです。

 買取条件は、パブリックコメントなども参考にして最終決定されますが、委員会案が大きく見直されることはないでしょうから、少なくとも事業用に関しては、従来の制度より格段に優遇されることになり、再生可能エネルギー、とりわけ立地制約が少ない太陽光発電は普及が一気に加速することになると予想されます。

 

太陽電池メーカーでは昭和シェル系のソーラーフロンティアに期待

 日本の太陽電池メーカーは、中国メーカーなどの安値攻勢と円高に苛まれて苦戦していますが、国内市場の拡大が収益回復のきっかけになる可能性があります。

 中でも昭和シェル石油グループのソーラーフロンティアのCIS太陽電池は、発電量(キロワットアワー)当たりのコストが競合商品に比べて割安で、これまでに出荷された製品の品質に対する評価も高いので、特にコストパフォーマンスが重要視されやすい事業用で高いシェアを獲得できる可能性があります。ソーラーフロンティアは、先行投資負担と太陽電池価格の急落によって昨年、多額の赤字の計上を余儀なくされましたが、固定価格買取制度の恩恵を受ける可能性が高い企業の一社になると期待されます。

 

再生可能エネルギーにはデメリットや問題点もある

 再生可能エネルギーの導入・利用の拡大が進むことは好ましいと考えていらっしゃる方が多いと思われます。

 確かに、再生可能エネルギーは、前述したように多くのメリットがあるエネルギー源であることは間違いありませんが、安定的に発電できる火力発電や原子力発電と違って太陽光や風力による発電量はあらかじめ正確に予測することができません。また、電力需要に合わせて発電量を増減させることもできません。使い勝手が良い電源ではないのです。

 蓄電池を併用すればこの問題は解決すると説明されることがありますが、蓄電池はまだ高価なうえに、充放電するだけで3割程度の電気が失われてしまいますから、投資コストがかさみ、効率を悪化させることにもなりますので、現時点では弱点を克服する切り札にはならないのです。

 再生可能エネルギーは、導入・利用の拡大によって二酸化炭素の排出量を削減できますので、発電量(キロワットアワー)の価値は高く評価できますが、供給力(キロワット)の価値は高く評価することができませんので、現状では、まだ原子力や火力の完全な代替エネルギーにはなりえないのです。

 また、導入・利用の拡大が進むと買い取りによる賦課金が増大するだけでなく、電気の質を維持するために、電力関連設備の増強や高度化を行わなくてはなりません。そのためのコストも発生しますので、国民の負担が短期間で急増する可能性があることにも留意しなくてはいけません。

 再生可能エネルギーは、そのメリットのみが説明されることが多いのですが、デメリットや問題点があることも正確に理解されるようにすべきと思われます。

バックナンバー
2012/04/20 不当廉売は何も生み出さない
2012/03/20 仕切り価格算定方式の修正を提案
2012/02/20 変化の兆し
2012/01/20 「新年の取り組みいかんで将来が大きく左右される」



会社案内個人情報著作権リンクポリシー
本ページに記載の記事・写真などの無断転載を一切禁じます。
著作権は泣}ジカルネットワークまたはその情報提供者に帰属します。

Copyright (C); 2012,
Magical Network Inc. All Rights Reserved.