活ノ藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 伊藤 敏憲
実現性が疑われる需給見通しの意味するものは?

政府がエネルギー・環境に関する選択肢を提示
 政府のエネルギー・環境会議は
629日、「エネルギー・環境に関する選択肢」を決定し公表しました。昨年秋以降に開催された総合資源エネルギー調査会、中央環境審議会などの審議内容を参考に策定されたもので、原子力発電の電源構成比を10年実績値約26%から、30年までに「0%程度」、あるいは「15%程度」、または「2025%程度」まで下げる3つのシナリオに基づいたエネルギーミックスの見通しなどが示されています。


いずれのシナリオも、再生可能エネルギーの導入やエネルギー利用の効率化を最大限進めることで、原子力依存度だけでなく、化石燃料依存度も下げ、エネルギー安全保障を改善し、温室効果ガスを削減する内容になっていますが、一次エネルギー供給に占める石油の比率は、10年度実績の37%(212百万kl)から、30年時点で、「ゼロシナリオ」が32%(153百万kl)、「15シナリオ」および「2025シナリオ」がそれぞれ31%(148百万kl)と想定されています。


シナリオの想定条件として、化石燃料は、環境負荷に最大限配慮しながら有効利用し、石油やLPガスを中心とした非常時に備えた体制整備の必要性も示されています。また、非電力部門において、排熱の有効活用や分散型電源の普及を加速化させるために、天然ガスコージェネレーションシステムの導入拡大、次世代自動車の普及拡大、高効率給湯機の普及拡大などを図るとされています。自動車に関しては、ハイブリッド自動車(HEV)、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)、燃料電池車等の次世代車の比率が30年時点の新車販売で最大7割まで拡大すると想定されています。最終エネルギー消費の内訳、並びに、石油製品別の需要見通しは示されていませんが、このような王権が実現するとガソリン需要は将来急減することになります。

 

審議会での議論の一部は実情にそぐわない

エネルギー・環境関連の審議会や研究会は、昨年3月以降に多数立ち上げられており、私も電力システム改革専門委員会、エネルギービジネス戦略研究会などに委員として参加しています。これらの審議会や研究会の配布資料や議事内容は、政府、経済産業省、環境省などのホームページで公開されていますが、残念なことに、実情にそぐわないのではと思われる資料や議事が散見されます。そもそも論点に妥当性が疑われるものが含まれていたり、逆に議論すべきと思われる内容が含まれていなかったりしています。


例えば、電力の供給力不足をはじめとする喫緊の課題に対する対処策は十分に議論されていません。上述したエネルギーミックスについても、原子力依存度の低減、再生可能エネルギーの普及拡大、エネルギー起源二酸化炭素排出量の削減を軸に議論することが果たして妥当かどうかに疑問を感じます。また、健全な経済成長を実現するための議論も尽くされているとは言い難い状況です。このような指摘は、経団連などの需要家団体からも表明されています。エネルギー政策に関わる議論はもっと実情に即して行うべきと思われます。

 

全石連のガソリン需要見通しは悲観的すぎる?

全国石油商業組合連合会(全石連)では、今年1月の幹部の会合で、15年度までの短期石油製品需要予測が報告されたようです。ガソリンの国内需要は、保有台数の伸び鈍化、消費者の価値観の変化や高齢化の進展などの影響による平均走行距離の減、HEVや小型車・軽自動車などの普及による平均燃費の改善などによって05年に減少に転じており、15年度の需要量は、確実性が高い「蓋然シナリオ」で4,460kl(年平均4.1%減)、「悲観シナリオ」で3,792kl(同6.7%減)、「楽観シナリオ」で4,767kl(同3.1%減)とされ、15年度以降に減少ペースがさらに加速し、蓋然シナリオで20年度に3,410kl25年度に2,310klまで減少すると予測されているようです。


この見通しが、いつ、どのような条件で策定されたものかを存じませんが、私は、短期的にはここまでガソリン需要が落ち込むことはないとみています。根拠の一つは更新による影響です。11年度末の自動車保有台数は、乗用車が5,873万台、貨物車・乗合車・二輪車を含む総台数が7,911万台でしたが、11年度の新車販売台数は、乗用車が388万台、総台数は500万台でした。これは11年度には保有台数の67%しか更新されなかったことを意味します。仮に更新された車の平均燃費がスクラップされた車に比べて平均30%向上したとしても平均燃費は年率約2%しか低下しないのです。私は、ガソリン需要の今後5年間の減少率は年率23%程度と予想しています。

需要予測は、定期的、かつ、状況に変化が生じた際には随時見直しを行っていくことが必要と思われます。

 

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