活ノ藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 伊藤 敏憲

石油の復権を図るために需給両面で対策を

伊藤 敏憲

コスモ石油が供給体制の再構築策を発表


 コスモ石油が来年
7月に坂出製油所(原油処理能力14万バレル/日)を閉鎖し、その後はオイルターミナル等として事業を継続すると発表しました。

同社は、このような決定に至った理由を、想定以上にガソリンや低硫黄重油などの国内需要が減退する見通しとなったこと、海外に製油所が新設された影響などで石油製品の輸出市場の競争が激化したことによって、過剰能力の解消とコスト削減によって競争力の強化を図ることが喫緊の課題になったためと説明しています。


千葉、四日市、堺の3製油所による新たな供給体制が再構築できれば、設備利用率の向上、二次精製設備の装備率アップ等による装置構成の最適化、固定費の削減などによって、コスト競争力を強化することができる見通しです。同社は、供給体制の再構築により年間100億円程度コストを削減でき、かつ、製品の需給バランスの適正化を図ることができると見込んでいます。


コスモ石油は、開発部門と直販SS部門に強みを持っています。今回、供給体制の再構築の方針が示されましたが、同社には克服しなくてはならない課題がまだ残されています。東日本大震災の際に火災事故を起こした千葉製油所の全面復旧と安定操業の実現、精製設備の高度化や石化事業の強化などによる付加価値生産性の向上、3製油所体制を踏まえた物流体制の再構築、開発部門の事業規模拡大、財務体質の改善などです。今年就任された森川新社長が強いリーダーシップを発揮し、これらの課題を克服していくことを大いに期待しています。


過剰精製能力は13年度内にほぼ消失へ


13年度にはJX日鉱日石エネルギーと出光興産も精製能力を削減する計画を明らかにしています。JXは、まだ具体的な内容は明らかにしていませんが、13年度末までに原油処理能力を日量20万バレル程度削減すると発表しています。出光は徳山製油所(原油処理能力日量14万バレル)を143月末に閉鎖すると発表済みです。


この結果、わが国全体の石油精製能力は、14年春までに現行比で50万バレル弱、約10%削減されて400万バレル/日前後となり、製油所の全国平均稼働率は、輸出入バランスが大きく変化しない限り、仮に原子力発電所の停止に伴う電力向け特需が消失したとしても8283%程度まで上昇する見込みです。

これにより設備余剰状態は一時的にほぼ解消する見通しですが、過去に製油所の稼働率が上昇する局面では、石油製品の国内需給が引き締まって卸売・小売の両段階でマージンが拡大したケースが多かったことから、13年度から14年度にかけて石油業界全体の収益環境が改善すると期待されます。

 

需給両面で必要な経営環境改善策


ただし、電力向けを除く燃料油の国内需要は、当面、年率23%のペースで減少し続けると予想されますので、14年度以降も、精製・元売各社は、精製設備の集約、設備の高度化による付加価値の向上、石油化学製品への生産シフト、製品輸出の拡大などに取り組み続ける必要があると思われます。


併せて、老朽化が目立つ需要家の設備・機器の更新に業界を挙げて取り組むことが必要と思われます。

東日本大震災をきっかけにエネルギー政策の見直しが進められていますが、石油業界は縮小均衡を図るだけでなく、石油の重要性や供給安定性の高さを国民に強くアピールして、需給両面で経営環境の改善に取り組む必要があると思われます。

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