活ノ藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 伊藤 敏憲

今年の冬も北海道を中心に不安なエネルギー事情が続く

伊藤 敏憲


特に厳しい北海道の冬のエネルギー事情


今年の冬も、日本列島は電力不足に苛まれることになりそうです。政治判断、行政手続きの遅れなどが影響して、原子力発電所を利活用できない状態が続くからです。


エネルギー及び環境政策を大きく見直し、かつ、10数年程度の期間をかければ、エネルギーコストの上昇、地球温暖化対策の後退、経済への悪影響などは避けられませんが、原子力発電に依存しないでも必要な電気を確保することができるようになると考えられます。しかしながら、短期的には、原子力抜きで国民の生活や経済活動に悪影響なしに必要な電気を十分に供給することはできません。


今年の冬は、北海道がとくに厳しい状況に陥りそうです。昨年の冬は北海道電力の泊原子力発電所の3号機(出力90kW)が動いていましたが、今年は動かすことができそうにないからです。他の地域でも、電力およびエネルギーの供給力を大きく上乗せすることができていませんので、昨年の冬と同程度の省エネ・節電が求められることになりそうです。

 

政治の空転が招いたエネルギー危機


泊発電所では、福島原子力事故を踏まえて規制機関から求められた電源の確保、冷却機能の確保、浸水対策、訓練やシビアアクシデント対応策の策定などの安全対策が実施され、耐震安全性評価の手続きが進められていました。政府や行政機関が、滞りなく措置していれば、冬までに動かすことができたはずなのですが、動かすことはできませんでした。そして、今年9月に発足した原子力規制委員会が、新たな安全基準を策定し、すべての原子力発電所にこの基準の達成を求める方針を示したことから、特例措置を講じない限り、再稼働時期は来年半ば以降にずれ込むことになってしまいました。


北海道では、今年の夏、一昨年と比較して7%以上の節電が求められていました。道内の住民や事業所の節電・省エネ努力によって目標を上回る節電が達成され、北海道電力も供給力を上乗せできましたので、夏には危機的な状況に陥ることはありませんでした。しかし、冬は事情が異なります。北海道では夏より冬の方が電力の需要が増えるからです(今年の冬の最大電力は夏に比べて70kW程度多い580kW程度の見込み)さらに、冬は、夜間にも暖房・融雪需要などによって電力需要が下がらないため、夏のように使用時間を調整して需要を抑制することも困難です。


北海道電力は、必要な供給力を確保するために、定期点検等で停止していた火力発電設備の稼働、冬季に予定されていた定期点検時期の繰り延べ、既存設備の出力増強、緊急設置電源の追加導入、燃料輸送用の内航船タンカーおよびタンクローリーの追加手配、公害防止協定の見直しによる火力発電所の稼働制約の緩和、自家発電設備を所有する事業者からの購入電力量の増加などの対策を進めています。しかし、泊発電所を利用できなければ、今年の冬に予想される需要を十分に満たすことができるかどうか微妙な情勢です。北海道では、今年の冬、昨年の冬や今年の夏より厳しい節電を求められることになりそうです。


なお、北海道では、現在、新電力が事業を行っていません。自家発電設備を持たない家庭や大半の事業所は電力の供給を北海道電力に委ねるしかないのです。また、北海道の電力網は、本州と連系されていますが、本州と結ぶ北海道・本州間連系(北本連系)設備の能力は60kWしかありませんので、多くを期待することはできません。

 


経済活動や暮らしに多大な影響が及ぶ不測の事態が発生する可能性も


これは北海道だけでなく全国に当てはまることですが、もしも、火力発電設備が計画外のトラブルで停止したり、異常な寒波によって暖房・給湯需要が想定以上に増加したりすると、経済活動や暮らしに多大な負担を及ぼす需要抑制策の実施が避けられなくなりかねません。例えば、需給調整契約を結んでいる大口需要家に対する強制力のある節電要請、大口需要家に強制力のある需要抑制を求める電力使用制限令の発令、あらかじめ地域と時間帯を指定した計画停電の実施などです。


発電設備のトラブルは年間を通じて発生しています。電気事業者には一般の事業者に比べて厳しい安全基準が適用されているのがその理由の一つです。また、東日本大震災以降、電力の供給力が不足する事態が恒常化していますので、発電設備は通常に比べて高い稼働状態を維持せざるを得えず、この影響で不測のトラブルが発生する確率が高くなっています。


様々な方々が「原子力に依存しなくても十分なエネルギーを確保できる」といった解釈を示されていますが、少なくともまだこの論理は当てはまりません。正確な情報に基づく判断が必要と思われます。


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