活ノ藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 伊藤 敏憲

新年は石油業界の将来を左右する節目の年に

伊藤 敏憲

 

石油業界はエネルギー政策・制度の見直し議論に積極的に参加すべき


 大震災、原子力の信用失墜を背景にした電力の供給力不足、エネルギー資源情勢の変化、地球環境問題といったエネルギー産業を取り巻く情勢の変化を踏まえて、エネルギー基本政策、電気事業制度などの見直しが議論されています。すでに、太陽光・風力・地熱・小規模水力・バイオマス火力発電などの再生可能エネルギーやガスコージェネレーションシステムを核とした分散型エネルギーの導入が推し進められていますが、エネルギー政策が大きく見直されると、石油産業は、当然、その影響を強く受けることになります。

残念ながら、昨年3月以降のエネルギー政策の見直しに関わる議論や、すでに実施段階に入った新しい制度の多くは、石油業界にとって好ましい内容ではありません。石油が供給安定性や柔軟性に優れたエネルギーであることは大震災や原子力発電の利用率低下局面で証明されています。石油の需要が極端に押し下げられることがないように、業界をあげて取り組む必要があると思われます。

 

需要減少局面で明暗を分ける精製・元売と販売事業者の業績動向


石油製品の国内需要は減少傾向で推移していますが、精製・元売各社の石油事業の実質損益は概ね好調に推移しています。生産・販売数量の減少によるマイナスを、精製・卸売マージンの改善、コスト削減・効率化などでカバーできているからです。

ただし、元売間の物流提携の解消・見直しが進められている影響で、地域的に需給バランスが崩れてシェア争いが激化している地域が局所的に見られるようになっています。今後、一部の元売は新たな物流体制を構築したり、場合によっては地域ごとに販売政策を見直したりすことが必要になると考えられます。

精製・元売の多くが好業績を維持する一方で、石油販売事業者の大半が厳しい経営を強いられています。需要の減少、小売マージンの低迷、カーケアなど油外収益の減少のトリプルパンチに見舞われているからです。

元売が、系列販売業者の経営を支援したり、販売を促進したりするため、個別に対応するケースがみられますが、差別的な対応では販売業界全体の収益環境を改善することはできません。むしろ、事業者間の競争をゆがめてしまい、石油販売業界の健全性や合理性を損なってしまう可能性があると思われます。

石油販売業界では、地下タンク規制の発効によって13年からSS数の減少が加速する見通しです。これにともなって廃業されるSSの顧客が流動化することになりますので、今後2〜3年の間に、優良顧客の確保、コスト構造の適正化、カーケアなど油外事業の収益拡大などに取り組んで、経営体質をいかに改善できるかどうかによって、事業者およびSS間で収益力の格差がつくと予想されます。

 

13年は石油業界の将来を左右する節目の年になる


今後、石油販売事業の収益環境が改善するかどうかは、元売各社がどのような施策をとるかによると考えられます。具体的には、精製設備の集約、需要に見合った生産・供給体制の維持などによって業転市場への割安な価格での製品供給が絞り込まれるようになるかどうか、元売の子会社販社が小売市況の改善に積極的に取り組むかどうかなどがポイントになると考えられます。13年は、石油業界および事業者の将来を左右する節目の年になると私は予想しています。


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