活ノ藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 伊藤 敏憲

シェール開発の主役は石油

活ノ藤リサーチ・アンド・アドバイザリー

伊藤 敏憲

シェール資源開発の中心は天然ガスから石油へ


日本では、「シェール(ガス)革命」に関する様々な情報が氾濫しています。その中には不確かなものが含まれています。例えば、シェールガスが大増産されているかのような情報が流されていますが、これは1年以上前の古い話です。北米の天然ガス専用の生産設備(リグ)の稼働基数は11年11月以降急減しており、足元の稼働基数は11年秋のピーク時の約3分の1の350〜360まで減少しています。天然ガス価格が低迷しているため、天然ガス開発事業の採算性が悪化しているからです。

一方、北米の石油リグの稼働基数は、12年半ばまで増加傾向で推移した後、1,400前後の高水準を維持しています。シェールガスと同じシェール(頁岩)層や浸透率・孔隙率が低いタイトサンド層に貯留された「シェールオイル」、「タイトオイル」などの開発が広がっているからです。シェール資源開発の中心は天然ガスから石油にシフトしているのです。

シェールオイルやタイトオイルの生産が拡大した理由は、原油価格が高値を維持する中、貯留層の解析・評価などの技術革新による探鉱精度の向上、「水平掘削」や坑井に流体を高圧で注入して坑井の周辺部の地層を人工的に破壊する「水圧破砕(フラクチャリング)」など掘削技術の革新によって、開発・生産コストが低下し、経済性が高まったからです。そして、石油リグの稼働基数の増加を反映して、アメリカの原油生産量は11年後半から顕著に増加しており、その影響で輸入が減少しています。これが原油価格の上値を抑える要因の一つになっていると考えられます。

なお、シェールオイルの生産時には天然ガスやLPガスが随伴されケースが多いので、ガス専用リグの稼働基数が大幅に減少しているにもかかわらず、アメリカの天然ガス生産量は高水準で維持されており、輸入量は依然減少傾向で推移しています。

 

資源制約説の後退が原油価格の抑制要因の一つ

非在来型の石油資源には、上述した「シェールオイル」、「タイトオイル」の他に、カナダに大量に賦存している高粘度のタール状の石油が主に地表に近い砂岩層に貯留された「オイルサンド」、ベネズエラのオリノコ川流域に埋蔵されているタール状の超重質油「オリノコタール」などがあります。また、穀物や植物などから生産される「バイオ燃料油」も非在来型石油に分類されます。

北米では、シェールオイル、タイトオイル、オイルサンドなどの開発が進み、原油、石油製品、LPガスなどが今後も増産されて、これらの輸入量が減少傾向で推移すると予想されています。

さらに、シェールオイル、超重質油などの非在来型石油資源は世界各地に賦存していることが確認されており、現在、世界各地で探鉱・開発が進められています。この結果、石油の可採埋蔵量が大幅に増加しています。石油の可採年数は、第一次オイルショック時に30数年で枯渇するとされていましたが、BP統計によると、07年末の42年から12年末の53年へ、この5年間で10年余り長期化し、未探鉱分を含めた究極埋蔵量をベースにした可採年数は百数十年に及ぶと推定されるようになっています。これにより石油の資源制約説(ピークオイル説)が語られることはほとんどなくなりました。原油先物市場は期近限月ものに比べて、期先ものの方が安くなるバックワーデーション状態となっていますが、その理由の一つが資源量の増加、並びに、増産余力の拡大にあると考えられます。

 

先物市場はアメリカの天然ガスと石油の値差の縮小を示唆

ちなみに、6月14日のNYMEXのLight Sweet Crude Oilの先物価格は、期近の13年7月物が1バレル97.85ドル、期先の21年12月物が80.80ドルで、前述したように、きれいな先安カーブを描いています。ICEのBrent原油、DMEのOman原油もバックワーデーションになっています。これに対して、アメリカの天然ガスの先物価格は、期近の13年7月物が百万BTU当たり3.733ドル、期先の25年12月物が7.415ドルとコンタンゴ(先高)になっています。アメリカでは、08年から09年にかけて天然ガスの取引価格が急落して以来、石油製品と天然ガスの価格格差が著しく開いた状態が続いていますが、先物市場取引の参加者のコンセンサスは、原油の値下がりと天然ガスの値上がりによって、これらの価格差が縮小していくと予想しているのです。


バックナンバー
2013/5/15アベノミスには頼れない石油産業
2013/4/15石油元売の中期経営計画に抜け落ちている重要な対策
2013/3/17変化するSSのカーケアサービスの収益環境
2013/02/17  「シェールガス革命」の幻想
2013/01/16石油業界は機器の普及拡大にもっと積極的に取り組むべき
2012/12/20新年は石油業界の将来を左右する節目の年に
2012/11/20ドバイ原油は当面90〜120ドルで推移する見込み
2012/10/15 今年の冬も北海道を中心に不安なエネルギー事情が続く
2012/09/15 石油の復権を図るために需給両面で対策を
2012/08/15 急激に悪化した石油元売の4〜6月期決算
2012/07/20 実現性が疑われる需給見通しの意味するものは?
2012/06/20 エネルギー政策の議論を乱す世論のゆがみ
2012/05/20 固定価格買い取り制度の開始で太陽光発電の導入さらに加速へ
2012/04/20 不当廉売は何も生み出さない
2012/03/20 仕切り価格算定方式の修正を提案
2012/02/20 変化の兆し
2012/01/20 「新年の取り組みいかんで将来が大きく左右される」



会社案内個人情報著作権リンクポリシー
本ページに記載の記事・写真などの無断転載を一切禁じます。
著作権は泣}ジカルネットワークまたはその情報提供者に帰属します。

Copyright (C); 2012,
Magical Network Inc. All Rights Reserved.