活ノ藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 伊藤 敏憲

公取委に再度指摘された元売の問題行為

伊藤 敏憲



 

公取委が元売の取引条件の設定等を適切でないと指摘

公正取引委員会が、自由民主党の石油流通問題議員連盟の役員会で、「取引上優位な立場にある元売が、系列特約店に業転玉の購入・販売を制限するのは公正な競争環境整備の観点から適切ではない」との見解を明らかにしたと報道されました。同役員会では、公取委が行ったガソリン流通実態調査に基づいて、元売が系列特約店に対する業転玉の購入・販売の制限していること、一般特約店に対する十分な情報の開示や交渉が行われていないことなどを問題点として挙げて、これらの行為が、取引上優越した立場にある元売が一般特約店に対し、一方的に競争上不利な取引条件を課しているおそれがあるとの見解が示されたもようです。

 

公取委は04年にもガソリン流通実態調査を実施し問題を指摘

公取委は、04年にもガソリンの流通実態調査を行い、04年9月に報告書を公表していました。

03年から04年にかけて実施された前回のガソリンの流通実態調査では、系列特約店向け系列玉の最高値と最安値との差は、平均で1リットル当たり10円程度、最大で10数円、中小の系列特約店向け系列玉と大手商社向け業転玉の卸売価格には3円から8円程度の価格差がみられたとされていました。

そして、公取委は報告書の中で、元売の卸売価格差について、取引内容が同一の場合、実質的な卸売価格に著しい相違がある場合、取引内容が同一とは見られない場合、取引内容の総意を超えた著しい相違がみられる場合に、それぞれ独占禁止法に抵触するとの見解を示していました。また、系列特約店等による業転玉の取扱い制限については、恣意的・差別的な行為、同系列の特約店からの業転玉の仕入れの禁止、他社のガソリンとの混合・混入などにより自社の系列玉としての品質管理を行っていない場合の商標権の行使が、問題のある行為であると例示し、仕切価格の算出方法等の説明、事後調整の廃止なども求めていました。08年から09年にかけて元売各社が導入した新価格体系は、公取委の指摘をある程度考慮した内容になっていたと考えられます。

 

公取が指摘する問題は業転玉の取扱いだけではない

今回の調査資料および報告書は、一般にはまだ公表されていませんが、マスメディアの報道によると、新価格体系導入後における系列特約店間の仕切格差の実態、系列玉と業転玉との仕切格差の実態、業転玉を取り扱っている店に対する石油元売の対応を把握する目的でおこなわれたとのことで、資料には、以下の内容が含まれているとのことです。

元売が出荷・販売しているガソリンには油槽所を共用していたり、バーター取引をしていたりする他の元売が精製した製品が含まれている。

11年7月〜12年6月までの1年間に元売が販売したガソリン販売数量のうち、約10%が商社に販売された後、業転玉として販売されている。

特定の地域及び期間における系列特約店向けの仕切価格に最大で1リットル当たり6.9円の開きがあった。

同一元売と系列・業転両取引をしている商社の業転玉は系列玉に比べて平均3.8円安かった。

多くの特約店が仕切価格算出のベースとなっている物流費や販売関連コストを開示されていなかった。

元売は、商標使用許諾契約や特約店販売契約により、系列特約店に対して自社のガソリンのみを購入・販売することを義務付けていた。

公取委は、これらの調査結果から、公正競争確保の観点から、@元売は一般特約店に対し、仕切価格だけでなく各構成要素の額を請求書などに明記する必要がある、A元売が販売関連コストを一方的に通知するのではなく、一般特約店の理解を十分に得られるよう説明及び意見交換を定期的に行うべき、B特約店契約に基づき元売のブランドマークを掲げた系列SSで系列玉と業転玉を混合して販売することを禁じているのは問題などの見解を示したもようです。

ところで、前回と今回の調査結果における系列仕切価格の差を比較すると、10数円から6.9円に縮小したことになります。ただし、仕切価格の差は、新価格体系が導入された直後には3〜4円程度にまで縮まっていましたので、ここにきて再び拡大傾向にありますし、小売マージン(小売価格と卸売価格の差)が03年〜04年当時に比べて平均で2〜3円縮小するなど、石油販売業界の収益環境が悪化傾向で推移していることなどを考慮すると、現状の仕切価格差には問題があると指摘せざるをえません。

公平な競争条件に基づかない競争によって系列特約店・販売店を含めたグループ全体の競争力を強化したり収益力を高めたりすることができません。元売各社は、仕切価格における同系列内、他系列との差、業転玉との差を縮めるか、その差を肯定できるようなブランド価値を創出する必要があると思われます。少なくとも、販売子会社が市況悪化を増長するような状況の中では、特約店・販売店に業転玉との差を認めてもらうことは難しいでしょう。


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