㈱伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 伊藤 敏憲


石油製品市況の上昇理由

伊藤 敏憲

 



ガソリン価格の高騰要因は原油輸入コストの上昇と増税

今年は、4月以降にガソリンの小売価格の高騰が話題になりました。7月には、資源エネルギー庁が毎週公表している給油所小売価格調査で、レギュラーガソリンの小売価格の全国平均が㍑169.9円(消費税込)まで上昇し、原油価格が1バレル150ドル近くまで上昇した2008年8月以来の高値を記録しました。ちなみに、2008年8月の最高値は185.1円でした。

いつを起点にするかによって、ガソリンの小売価格の変動理由は異なりますが、2年前の12年7月の安値㍑139.9円から㍑30.0円上昇した主な理由は以下の通りで、原油コストの上昇と増税でその理由をほぼ説明することができます。

①原油コストの上昇…㍑25円

(ア)  原油価格が1バレル約20ドル上昇(ドバイ原油FOB価格は90.4ドルから110.7ドルへ上昇)…㍑約12円

(イ)  為替の1ドル約22円円安…㍑約13円

②消費税率の5%から8%への引き上げ…㍑5.9円

③原油輸入関税の引き上げ…㍑0.5円

ちなみに、ガソリンには揮発油税が㍑53.8円(内訳は揮発油税㍑48.6円、地方揮発油税㍑5.2円、沖縄県は㍑7円軽減された㍑46.8円)加算されていますが、揮発油税にも消費税が課税(二重課税)されています。消費増税の影響は二重課税による分だけで㍑1.6円になります。

 


元売の利ザヤ拡大も小売マージンは縮小


一方、今年1月初旬の安値㍑158.3円と7月の高値とを比較すると㍑11.6円上昇していますが、同じ期間に原油のコストは㍑0.8円低下していますので、この間の上昇理由は、原油コストの変化によるものではありません。消費増税による影響が㍑5.1円ありますが、残りは、ガソリンの利ザヤ(マージン)の拡大によります。1月時点では、国内の需給ギャップ(石油製品の生産能力と国内需要との差)が大きかったことなどから、ガソリンをはじめとする石油製品が安値で取引されていましたが、その後、JX日鉱日石エネルギーの室蘭製油所、出光興産の徳山製油所の廃止などによって、石油精製能力が削減され、需給ギャップが縮小したことで需給が引き締まった上に、今年4月以降に複数の石油元売が卸売価格の決定方式を見直したことなどによって原油コストの上昇を反映しやすくなったことから、卸売価格が大幅に上昇したからです。なお、利ザヤ(マージン)は精製・卸売マージンと小売マージンに分けることができますが、1月時点と7月時点を比較すると精製・卸売マージンは10円前後拡大していますが、小売マージンは逆に縮小しています。価格の高騰、天候不順の影響などから、金額・数量を指定する限定給油の比率が高まり、販売量が落ち込んでいましたので、小売価格に転嫁するのが難しかったからと考えられます。需給が引き締まっていることもあり業転市場に安値玉が大量に出回っているわけではありませんので、元売の販売子会社が市況是正を積極的にリードする必要があると思われます。



 

灯油販売でもガソリンと同様の問題が発生する可能性がある


需給ギャップが縮小した影響で、ガソリン以外の石油製品の需給も引き締まりやすくなっています。間もなく灯油の需要期を迎えますが、灯油の8月の利ザヤを昨年と比較すると㍑5円程度拡大しています。灯油の需要は、冬場の天候に大きく左右され、価格も影響されますので、天候次第の面もありますが、消費増税の影響も㍑約3円ありますので、今年の冬には灯油の価格上昇が話題になる可能性が十分にあると思われます。



バックナンバー
2014/7/31疑問が多いエネルギー供給構造高度化法の石油精製業に関わる新・判断基準案
2014/7/1原油市況を支える地政学的リスク
2014/5/30仕切価格体系変更の歴史
2014/4/28 閣議決定された新「エネルギー基本計画」の問題点
2014/3/28 TOCOMの石油先物市場を再活性化できるか TOCOMがSCDを開始
2014/3/2 ポスト高度化法は必要か?
2014/1/28景気に大きな影響を及ぼすエネルギー事情
2014/12/21 ガソリン市況を改善させたある元売の元経営トップの英断
2013/11/28LNGのスポット取引市場は発展するか
2013/10/26元売は公平な卸売市場の形成と小売マージンの是正に取り組まなくてはならない
2013/9/26北米からの輸入が拡大しても日本のガス輸入価格が大幅に下がるとは思えない
2013/8/27シェールガス・オイルの虚実
2013/7/19公取委に再度指摘された元売の問題行為
2013/6/21シェール開発の主役は石油
2013/5/15アベノミスには頼れない石油産業
2013/4/15石油元売の中期経営計画に抜け落ちている重要な対策
2013/3/17変化するSSのカーケアサービスの収益環境
2013/02/17  「シェールガス革命」の幻想
2013/01/16石油業界は機器の普及拡大にもっと積極的に取り組むべき
2012/12/20新年は石油業界の将来を左右する節目の年に
2012/11/20ドバイ原油は当面90~120ドルで推移する見込み
2012/10/15 今年の冬も北海道を中心に不安なエネルギー事情が続く
2012/09/15 石油の復権を図るために需給両面で対策を
2012/08/15 急激に悪化した石油元売の4~6月期決算
2012/07/20 実現性が疑われる需給見通しの意味するものは?
2012/06/20 エネルギー政策の議論を乱す世論のゆがみ
2012/05/20 固定価格買い取り制度の開始で太陽光発電の導入さらに加速へ
2012/04/20 不当廉売は何も生み出さない
2012/03/20 仕切り価格算定方式の修正を提案
2012/02/20 変化の兆し
2012/01/20 「新年の取り組みいかんで将来が大きく左右される」



会社案内個人情報著作権リンクポリシー
本ページに記載の記事・写真などの無断転載を一切禁じます。
著作権は㈲マジカルネットワークまたはその情報提供者に帰属します。

Copyright (C); 2012,
Magical Network Inc. All Rights Reserved.