「中東、アジアを中心とした国際情勢の本質を掲載 当サイト編集顧問」

国士舘大学政経学部政治学科講師

北朝鮮のミサイル発射に潜む「中東」の核事情 

北朝鮮のミサイル発射強行の理由に付いて、ほぼ全てのメディアは金正恩体制発足に合わせて国威発揚を狙ったものとしている。この事を前提として、ミサイル発射がもう一つ重大な影響力を発揮したものとして、2月29日の米朝合意を採りあげるべきであろう。合意の要点は以下の点に絞られる。 

1.北朝鮮の核実験、寧辺の核施設でのウラン濃縮活動を凍結する事。

2.ウラン濃縮活動をめぐるIAEAによる監視を受け入れる事。

3.長距離弾道ミサイル発射を一時凍結する事。

  それに対してアメリカが24万トン分の栄養補助食品を提供する。 

 これは一見、北朝鮮が新体制初の外国との合意で軟化路線を示したように見えるが、実は全く逆の解釈が成り立つ。 

1、 ウラン濃縮凍結はプルトニュウム型核爆弾を志向しているとされる北朝鮮の核兵器開発への影響は薄い。従ってIAEA受け入れには問題が無い。

2、 米国に到達するような長距離弾道ミサイル発射は凍結するが、アジア全体を射程に入れる中距離ミサイルは容認される。 

北朝鮮にはこう見えるはずであり、彼らにとっては現状がほぼ維持されるばかりか、食糧支援まで獲得できる事となる。更には、合意事項の中でミサイル発射後の制裁措置には言及されていない。とすれば、今回の発射強行も人工衛星と言い張れば米国は容認する―と読んでも不思議ではない。

【イランにある地下60mの施設が握る中東情勢】 

 問題は、この様な粗雑な合意を米側がなぜ容認したのかである。実はその背景にイランの核兵器開発問題があり、これを巡ってイスラエルとイランの暗闘が全世界的な展開を見せ、米国本土にも多大な影響を及ぼす可能性が出て来たからだと言えるだろう。

 世界経済の趨勢を決めかねない程の産油国であるイランの核兵器開発は中東に於いて中国に匹敵する強大な国家の誕生を意味し、これだけでも世界の枠組みが大きく変化する。さらに問題なのは、イランの強硬なイスラエル敵視政策だ。イランはイスラエルを地上から抹殺し、その支援国家に敵対する事を国是としている。この点からすれば、核兵器開発完成が秒読み段階に入ったこの時期、イスラエルが生き残りをかけた攻撃に出る可能性が極めて高いと言えるだろう。この際かつてイスラエルがイラクの核兵器工場を空爆したように、イランの核開発施設に直接攻撃を仕掛ける事が想定できるが、この事を見越してイランの核施設は岩盤をくり抜いて地下60メートルの所に設置されているのだ。現状ではこの施設を破壊するには核爆弾を用いるしかないと言われている程困難である。 

【科学者がなぜ? 爆弾テロで狙われる】 

この核施設に付いてイラン国内で奇妙な事件が起きていた。2010年1月から、今年の1月にかけて、核施設に勤めるイラン人技術者や科学者、大学教授等、核兵器開発に重要な役割を果たしていた人物4人が出勤途中の車に仕掛けられた磁石式の爆弾で殺されたのである。

4人目の犠牲者となるウラン濃縮専門技術者がテヘランで爆殺された今年1月11日から間もない2月13日午前、今度はインド、ニューデリーのイスラエル大使館に勤める外交官夫人がテヘランの爆殺事件と同じ磁石式プラスチック爆弾を車に仕掛けられて重傷を負った。更には同日午後、同じタイプの爆弾がグルジアのトビリシにあるイスラエル大使館の公用車の仕掛けられているのが発見された。その翌日の2月14日、今度はタイのバンコクでイラン人4人が関与した爆弾事件が発生。犯行に加わったイラン人のうち1人は爆弾で負傷し、もう一人は逃走寸前にバンコクの空港で逮捕された。タイでは1月にもヒズボラ構成員と見られるレバノン国籍の男が逮捕され、バンコクの彼の借家から4トンにも登る爆発物の材料が発見された。 

【オバマの焦りが中東安定を遅らせる!?】 

これらの事実からすれば、イスラエルの秘密機関モサドの暗殺に報復する形でイランのテロ組織ヒズボラが仕掛けた攻撃である可能性が極めて高い。事実、イスラエル軍の統合参謀本部広報官は数々の証拠を挙げてヒズボラの犯行だと主張し、イランの国営TVではモサドの犯行を盛んに宣伝。両国以外の様々な公的資料によっても両国の主張には説得力がある。この様に、イランの核兵器開発を巡ってイスラエルとイランの暗闘が外国に飛び火し、米国本土に到る可能性が極めて高くなった事から、オバマ政権としては、直接的には害が及ばない北朝鮮の核問題を早急に片づけ、外交的なポイントを稼ぐと共に、イラン問題に集中したと考えられるのだ。その具体的な政策としてオバマ政権は、イランが核兵器をつくれるようになる前の今こそ、いかなる手段を採っても攻撃するべき時だとしているイスラエルを押さえつけ、経済制裁を強化してイランを封じ込める、というできる限り穏便な戦略を採ろうとしている。その背景にあるのが、大統領選挙と米国内の財政問題だ。

アメリカは今、イラクとアフガニスタンの両国で駐留米兵約6200人の命を失い、1兆2000億ドル(約92兆円)を超す戦費が財政に大きな負担となっている状況だ。オバマ政権はアフガニスタン駐留米軍を撤収して国内の経済再建を優先する政策をとっており、その方向性は完全に内向きだ。こう言った情況の中でイランの核兵器製造施設を巡ってのテロが地域内では収まらず、米本土に飛び火すれば、野党共和党から、弱気の外交・防衛政策だと非難され続けている事からオバマ氏の大統領再選は困難となる。これを何としても避けたい―大統領選挙を年内に控え、有利に選挙戦を運びたいオバマ政権の焦りが、冒頭に挙げた合意に繋がり、北朝鮮のミサイル発射に繋がったと言えるだろう。




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