「中東、アジアを中心とした国際情勢の本質を掲載 当サイト編集顧問」

国士舘大学政経学部政治学科講師

日本と韓国の「本当の姿」

【世界一の看板は消えた】

2012年2月22日、欧米格付け会社フィッチ・レーティングスがソニーとパナソニックの格付けをそれぞれ投機的水準に引き下げたと発表した。両社はこれまで投資適格としては最も低い「トリプルBマイナス」とされていたが、いずれもTV等の主力商品で競争力が低下している上に、円高などで収益回復が見込めないため、投資先としては確実な収益が見込めない、とされたのである。

日本を代表する世界的企業が投資先としては投機的水準の価値しかないと決めつけられるのに到った理由として各メディアは、韓国のサムスン電子グループを始めとする韓国企業の技術的な追い上げと、韓国政府のウォン安政策に伴う輸出増を挙げている。事実、今年の夏、タイや台湾を旅行したが、日本企業の巨大な広告ディスプレイが占めていた大都市の目抜き通りでは、韓国企業のきらびやかな看板が目立ち、インターネットサイトでは、韓国企業のスポンサー広告が目白押しの状態であった。これらを見る限り、日本経済の衰退と韓国経済の隆盛が見事なコントラストとして強く印象付けられる。


【日本からの4兆円強の資金を泡にした韓財閥】

韓国経済が大躍進を遂げたのは、1965年の日韓基本条約をきっかけとして、日本から約9億ドル(現在価格では約4兆5000億円)もの資金が韓国に流れ込んだ事にある。それまでの韓国経済はソ連式の計画経済を推進していた北朝鮮に劣っていた。

そして、当時の国家予算も3億5000万ドル程度であった。そこに国家予算の2.5倍近い資金の流入を受けた韓国経済は「漢江の奇跡」と呼ばれるような大躍進を遂げ、1988年にはソウルでオリンピックを開くまでになったのである。この間、高速道路をはじめ、国内インフラが整備され、国民の生活水準も大幅に上がった。

中でも特徴的なことは財閥系企業が大いに躍進し、自動車、電子産業などで韓国経済を牽引。「現代」「起亜」「大宇」、「三星」等のグループ企業が国内産業の大部分をその支配下におくようになった事である。

が、全般の経済体質は脆く、その実態が露呈したのが1997年。タイで起きた通貨危機が飛び火し、短期資金がタイと同様に韓国から逃避。韓国の外貨準備高が急激に減少し、経済危機に陥ったのである。そのため韓国ウォンは大暴落し、輸入物価は高騰し、財閥系企業の倒産が多発した。急増した不良債権は金融機関の経営を圧迫。金融機関そのものも財閥系だったので様々な矛盾が一気に噴き出した。大企業に偏った韓国経済の構造的ぜい弱性が表面化、韓国経済は破たん状態になってしまったのである。支払い準備に窮した韓国政府は結局IMF(国際通貨基金)から借金をせざるを得なくなった。その見返りとして韓国経済はIMFの支配下にはいる事となった。この時IMFの課した条件が、今日の韓国経済の方向性を決定づける事になったのである。

【経済再生 これが常套手段】

先進国が出資したIMFや世界銀行から借金する場合、「構造調整プログラム」の実施が条件づけられる。プログラムの内容は債務国の状況によるが、概ね以下のようになっている。 

(1)緊縮財政(医療・教育・福祉・保険・環境整備予算の削減、あるいは公務員の解雇・賃金の引き下げ)

(2)付加価値税などの増税

(3)公的企業の民営化

(4)生産性や外貨準備を向上させる産業の促進

(5)高金利や通貨の切り下げ

(6)各種規制緩和(金融・投資・貿易の自由化)

これらの条件は金を借りる立場から言えば、もっともな事で、いちいち逆らう必要がない易しい条件のように思われる。が、1つ1つ検証すると大きな構造変化を求められている事が分かる。

借金を返すために、第一にしなければならない事は節約だ。端的に言えば行政費用を徹底的に削減し、効果の乏しい行政サービスは廃止する(1)。次に収入を確保するための増税(2)、更には資産価値のあるものを売却(3)。加えて一層の収入確保のために特定産業への政府援助(4)。それでも貿易利益が出なければ通貨の切り下げをし、輸出を増やす(5)。規制緩和で自由市場経済とし、外国人投資家の企業買収を自由化。労働市場の流動化を促進し、解雇や雇用をしやすくするような雇用形態にする(6)…など、国情に合った経済状況を効率一辺倒な形態に替え、国の形を変える程の大変革が要求されるのだ。


【貿易依存度96.7% 官民一体の異様】


韓国もIMFとの間でこの6つの条件に沿うような形の合意事項を承認。改革を推進して2001年8月、195億ドルを全額返済してIMF支援体制からの脱却を果たした。

韓国がIMF支配下にあった4年間に起こった事を検証してみよう。まず国民所得に最も大きな影響を与えたのが、規制緩和による労働市場の流動化である。韓国ではまさにリストラの嵐が吹き荒れ、失業率は16%増加。その上、輸出増進のためのウォン安政策で輸入物価が高騰、砂糖は80%、小麦は76%も上昇し、庶民生活は大打撃を受けた。

IMF管理以前、平均所得の半分しか収入の無い「貧困層」は11.2%、2006年上半期の資料では倍近い20.1%に増加。逆に平均の1.5倍以上の「富裕層」は20.1%から25.3%に増加し、凄まじい格差社会が誕生していたのである。

IMF体制下でセット・アップされた貿易促進政策は、韓国の貿易を飛躍的に伸ばした。この事が冒頭で挙げたソニーやパナソニック等の日本企業の業績不振に繋がっている事も現実の問題として捉えなければならない。

しかし、冷静に見て行けば、韓国経済にとって相当危うい形になっている事が見えてくる。まず、韓国経済の貿易依存度である。これを2011年の統計で見て行けば、韓国のGDPに占める貿易依存度は何と96.7%。内、輸出依存度は49.7%、輸入は47.0%となり、貿易収支は黒字ではあるが、日本の輸出依存度が2010年で14%である事からすれば、韓国経済が貿易に対する依存度が異常に高い事が分かる。

更に言えば、韓国では財閥系企業10社の売上高がGDPの76.5%を占めている。中でも、サムスングループが10社の総売り上げ946兆1000億ウォン(約66兆円)の内270兆8000億ウォンで全体の21.9%を占めている。とりわけ注目されるのはサムスン電子の携帯電話における利益が70%となっている事だ。韓国が官民一体となって集中と選択政策を推進した結果と言えるが、この様に一企業と一業種に利益が集中し、選択肢が極端に限られている状態は異様としか言えないだろう。この様な特化した企業が現在のところ、日本企業と張り合っているのが現状である。

その結果、家電部門での韓国内シェアはサムスン・LDグループが約95%、自動車部門では現代・起亜グループが約80%を占め、ほぼ財閥系企業の寡占状態となった。これから見えてくる事は、国内での競争がほとんど無く、国民にとっては安くてよい製品を選ぶ余地が極めて限られた社会となっている事である。従ってその利益はサムスン、現代等の財閥系企業に集中して行かざるを得ない。

【またもや美徳を奪ったアメリカン】

そして、IMF体制下で成立した外国人投資家の企業買収の自由化により、韓国株式市場全時価総額の40%以上が外国人株主となり、優良企業では50%以上の株式を外国人が保有している企業が多数を占めている。この事は韓国企業が上げた利益の相当部分が韓国国内に還流せず、外国に流れて行くという事になるわけだ。当然のことながら、韓国企業は外国人株主の意向に沿った経営をせざるを得ず、アメリカン・スタンダードが浸透し、韓国の伝統や価値観を犯して行く事になって来る。

経済は分配・利益・発展・生産の4要素がバランスを保つ事で成り立って行く。この点から言えば、韓国経済の現状はいびつな状況にあると言えよう。韓国政府は不平等の拡大が問題であるとは知りながらも、構造的な問題が大きすぎて国内の苦境を輸出で打開する政策をとり続けざるを得ない。事実、2012年12月に行われた韓国大統領選挙では保守系の朴候補、革新系の文候補とも経済改革を重要政策として掲げ、選挙戦を戦った。選挙の結果は財閥中心の韓国経済を一気に改革しようとする革新系候補を、緩やかな改革を唱えた保守系候補が勝利したが、いずれにしても現状を改革するには強力な指導力と時間がかかるだろう。ましてや、韓国経済を支える重要な柱である外資との問題は極めてハードルが高い。

【問題から目を背ける為の反日政策】

この様な経済的な情況の中、歴史と伝統が極めて薄いアメリカという特殊な地域で誕生した経済効率のみを追求するアメリカン・スタンダードが韓国社会に大きな影響を与えている。

この事で年功序列、先輩後輩、尊敬といたわりと言った韓国の伝統を培った儒教的規範が崩れ、韓国社会の根底が崩壊の危機に立っている。これに言いようのない苛立ちと不安を抱いた国民感情を、竹島問題で煽り立て、本来ならば、国民自身のために自国を改革し、発展させるために存在すべき「愛国心」を‘日本憎し‘の方向に向けさせることで国民の目をそらし続ける政府の存在にこそ、韓国人が立ち向かうべきであろう。

現時点での我々としては、韓国の国内問題に口を挟むべきではないが、毅然として主張すべきは主張し、時を待ちながら韓国の人々の現実を直視する意識変革を待つしか手がないと思われる。

少なくとも現状では「反日」は韓国内の深刻な状況から目をそらす一時的な情念の発露でしかなく、問題解決には至るものでない事を知るべきであろう。


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