1-2.原油輸入価格を押し上げた為替の円安


 2011年から2014年半ばにかけて原油価格が比較的安定的に推移したと説明しましたが、これはドルベースの値動きのことです。円ベースの原油輸入CIF価格は、2011年度56.7/g、2012年度59.4/g、2013年度69.2/g、20144月〜970.6/gと、2012年から2013年にかけて上昇しました。これは、為替が円安になったからです。


201212月に誕生した安倍政権による金融政策「アベノミクス」を反映して、2011年度に1ドル当たり79円だった円・ドル為替レートは、2012年度83円、2013年度100円、20144月〜9103円と円安傾向で推移し、これが、原油など鉱物性燃料の輸入単価を押し上げ、輸入額を増加させる要因となっていました。


為替は、国や地域間の経済状態と金融政策の差を反映します。アメリカと日本の状況を比較すると、アメリカの経済状態は先進諸国の中で最も良好で、金融状況も、アメリカが引き締める方向にあるのに対して、日本は緩和政策を続けざるを得ない状況にあります。日米間の比較だけからすると、為替はさらに円安に振れる可能性があると考えられます。


ちなみに、1ドル当たり10円の円安が、原油価格が1バレル110ドルのケースでは、原油輸入コストを7.5/g、原油価格が1バレル50ドルのケースでは3.4円、それぞれ押し上げます。



1-3.原油価格急落の背景事情


原油の需給は、少なくとも2013年の年初以降引き締まっていませんでした。これは、産油国及び消費国の原油及び石油製品の在庫水準が高かったこと、原油市場においてスイングプロデューサー(需給調整)の役割を担っているOPECの主要国が減産を強いられていたことなどから確認することができます。景気が停滞する国や地域が多く需要が伸び悩む中で、北米においてシェールオイル(タイトオイル)が増産されていたことがその背景事情だったと考えられます。


また、経済性からみても、100ドルを上回る原油価格には割高感がありました。当時稼働していた世界中のほぼすべての開発プロジェクトが十分に採算の取れる水準だったからです。

このように、需給や経済性などからすると、原油価格は2013年の年初から値下がりしていておかしくなかったと考えられます。しかし、アラブの春を契機に、中東、北アフリカの産油諸国などで政情悪化が広がったり、ロシア産の原油・天然ガスをヨーロッパに輸送するパイプラインの主要ルートにあたるウクライナの政情が悪化したり、IS問題が深刻化するなど、次々と地政学リスクが顕在化したこと、主要各国の金融緩和政策による過剰流動性が国際商品の相場を押し上げていたことなどによって、原油価格は高止まりしていたと考えられます。


ところが、昨年半ば以降に情勢は変化しました。まず、北米で原油の増産が続く中で、中国、欧州、日本などで想定外に景気が低迷して需要が減退したことなどから原油の需給がさらに緩みました。原油価格を押し上げた地政学リスクの多くが実需給には大きな影響を及ぼさないことも確認されました。さらに、昨年8月から米国が金融を引き締める方向に修正し始めたことから、金融相場にも陰りが見られるようになりました。原油市況の急落は、このような変化をきっかけ始まったと考えられます。そして、2009年後半以降に形成されていた原油価格チャートの下値抵抗線を割り込んだ8月下旬に、原油相場が一気に崩壊したと考えられます。



データ出所:「貿易統計」、IR&A予想

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