活ノ藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 伊藤 敏憲

変化の兆し


日本の事業戦略を見直すエクソンモービル

 
昨年は、東日本大震災、原子力事故、大規模な風水害、景気の悪化、資源国情勢の緊迫、これらを踏まえたエネルギー政策の再検討など、石油及びエネルギー業界にとって激動あるいはそのきっかけとなる事件が次々に起きた年でした。今年は、これらの出来事が産業の動向や企業の経営に少なからぬ影響を及ぼす年になると予想されます。

 そして、年明け早々、石油業界に新たな大きなニュースがもたらされました。エクソンモービルが東燃ゼネラル石油の保有株式の相当部分を同社に売却する方針を固めたことが明らかになったからです。

 東燃ゼネラル石油株式会社とエクソンモービル有限会社は、エクソンモービルが日本から撤退する計画はないと表明していますが、日本における資本構成について検討中であることを認めています。2月初旬現在において、まだ正式な発表は行われていませんが、エクソンモービルグループの日本国内における経営戦略が大幅に見直されることになると考えられます。

 東燃ゼネラル石油あるいはエクソンモービル有限会社が国内の他元売りとの業務提携や経営統合を模索しているとの噂は数年前から何度も流れていました。その中には、東燃ゼネラル石油がMBO(マネージドバイアウト=経営陣による株式の取得)によってエクソンモービルが所有する株式を買い取った上で進めるのではといった憶測も含まれていました。また、エクソンモービルグループが、収益性、投資収益率、成長性などを判断基準にして売却や買収などを行いながら、世界全体で事業戦略の見直しを進めていましたので、今回のニュースに特に意外感はありません。

 他元売りの状況を見る限り、今回の動きがすぐに他元売との再編にはつながるとは思えませんが、東燃ゼネラル石油の経営陣が経営に独自性を打ち出すようになると予想されますので、今後の経営戦略の修正内容いかんによっては、石油業界全体の経営環境に大きな影響が及ぶ可能性があるでしょう。


過当競争は業界全体の利益を減らす

 
元売各社が市場連動型の仕切価格体系を導入したことで、スポット市況の低下は、卸売価格全体の低下、小売市況の悪化につながりやすくなっています。

 経営体制が変わることになる東燃ゼネラル石油に限らず、元売各社が他社の販売政策やシェアの変動に惑わされず、自らの収支の改善にこだわった経営を続ければ、業界全体の収益環境を維持・向上することができます。

 ところが、もしも単位当たりのコストを下げるために製油所の稼働率を引き上げて販売攻勢に転じる元売や精製会社が増えると、石油製品の供給量が増加して国内需給が緩みやすくなり、市況が崩れやすくなります。そして、マージンの下落率が数量の伸び率を上回ってしまうと収支が悪化してしまいます。

 石油製品の国内需要は、価格変動による影響をほとんど受けません。価格競争は単純に業界全体の利益の減少につながってしまうのです。販売数量やシェアに過度にこだわった販売競争が繰り広げられると、個々の企業だけでなく、業界全体で十分な利益を確保することが難しくなってしまいます。これは石油業界の歴史が証明しているのではないでしょうか。

 仕切価格体系の改定とブランド料の引き上げによる効果もあり、精製元売り各社の収益は改善しましたが、販売業界の経営環境は厳しい状態のままです。目先の増収のみにこだわった短絡的な判断によって、過当競争が再燃されることがないことを願うばかりです。



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