活ノ藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 伊藤 敏憲


石油業界は機器の普及拡大にもっと積極的に取り組むべき


伊藤 敏憲

 

燃料油の内需を左右する石油機器の普及率が低下


燃料の需要はその燃料を使う機器の普及率によって大きく左右されます。民生用石油機器の国内販売台数は08年あるいは09年を底に増加に転じましたが、11年〜12年の実績は90年代の水準を大きく下回っています。石油ストーブは、大震災をきっかけに石油機器の利便性の高さが再認識されたことなどもあって、震災直後から昨年の前半まで販売が好調でしたが、昨年7月から10月まで前年実績を割りこみ、冷え込みが厳しくなった11月ごろから再び売れ出したようですが、12年の販売台数は11年の実績を下回ったもようです。機器の耐用年数を考慮すると民生用分野における石油機器の普及率は依然低下傾向にあると推察されます。

ただ、原油価格が100ドルを超える現状で比較しても、民生用分野における石油のコストは電気やガスに比べて割高ではありません。では、なぜ石油機器の普及率が低下しているのでしょうか。

おそらく、直接的な原因は、エアコン、エコキュート(自然冷媒ヒートポンプ給湯機)などの電化製品や、TES(ガス温水システム)、エコジョーズ(潜熱回収型高効率ガス給湯器)、ガス温水式床暖房などのガス機器の導入が拡大しているためと考えられます。しかし、石油業界が、電化や都市ガス化に積極的に対抗してこなかったこともその一因だったと考えられます。

 

業界をあげて取り組まなければ電化・都市ガス化の流れは防ぎきれない


石油機器は、燃料切れをケアしなくてはならない、他の暖房機器に比べて空気が乾燥しやすい、灯油セントラルのように燃料を建物の外に設置したタンクから配管で供給するシステムではタンクを設置スペースが必要でタンクや配管などのメンテナンスの手間がかかるなどに難点があると考えられます。

したがって、機器の性能・機能の向上を図って上述した弱みの軽減や克服に努めること、潜熱回収型石油給湯器「エコフィール」、高効率低NOxボイラ、石油コジェネレーションなどの高効率で環境にも優しい石油機器の認知度を高め普及の拡大に努めること、機器だけでなくビルや住宅の断熱性能を向上させて暖房コストの一層の低減を図ることなどが有効な対策になると考えられます。

残念なことに、高効率石油機器の認知度は電化製品やガス機器に比べて必ずしも高くありません。また、石油機器が年々改良されていて性能や使い勝手が良くなっていることも十分に知られていません。これらを逆説的にとらえると、販売事業者、元売、機器メーカーが一致団結して取り組めば、必ず導入・普及の拡大につながる成果が上げられると考えられます。実際に、販売事業者と機器メーカーがタイアップすることで成果が上がっている実例があります。

わが国では、福島原子力事故やその後の政治的な判断などが影響して原子力発電を十分に活用できない状態が続いており、電気の供給力が不足していることを考慮して、電力各社や家電・住設メーカーなどは住宅の電化コマーシャルを手控えています。この影響で、オール電化住宅の普及にブレーキがかかり、特に電化リフォームの件数が減少していますが、それでも11年度は全国の新設住宅の半分がオール電化住宅で占められていました。電力不足は未来永劫続くわけではありませんし、経済や暮らしに大きな悪影響を及ぼすそのような状態が続くことを期待するべきではないでしょう。電力需給が適正化すれば、住宅機器の電化の流れが再び加速する可能性が高いと思われます。

都市ガスが普及している地域では、天然ガスの利用の拡大を進めようとする政策的な判断も影響して、産業用・民生用の各分野で都市ガスへの燃料転換が着実に進んでいます。都市ガス(天然ガス)の導入・普及の拡大を図ろうとする動きが官民で活発に進められていますが、この動きは強まることはあっても弱まるとは思えません。

しかも、石油機器の更新が進んでいないため、耐用年数を迎えている石油機器が急速に増えてきています。これらを勘案すると、数年内に石油機器の普及率が急速に低下してしまう可能性があると考えざるを得ません。速やかに対策を講じる必要があると思われます。

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