活ノ藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 伊藤 敏憲

石油元売の中期経営計画に抜け落ちている重要な対策

伊藤 敏憲

 

石油元売各社の環境認識と石油事業の経営合理化策の内容はほぼ同じ

JX、出光興産、コスモ石油、東燃ゼネラル石油の4社が、今年から3カ年あるいは5カ年を対象期間とした新しい中期経営計画を発表しました。各社は、石油精製販売事業に関わる経営環境を以下のように認識しています。

・  燃料油の需要は、国内は漸減、海外はアジアを中心に増加し、産業分野の需要家の海外進出が進む。

・  パラキシレンなどナフサ由来の石油化学製品の需要は増加し、利ザヤも堅調に推移する。

・  シェールガス・シェールオイル革命が進展する。

・  原油およびエネルギー資源価格は高値圏を維持する。

そして、これらの認識に基づいて各社が掲げた経営合理化策は、下記の内容で概ね一致していました。

・  燃料油内需の減少に対応するため、石油精製設備の廃止・原油処理能力の削減などに取り組んで設備を集約し、供給部門の固定費・燃料費などを削減する。

・  燃料油・潤滑油などの海外事業を拡大する。

・  パラキシレンなど石油化学製品事業を拡大する。

・  石油販売部門において、販売ネットワークの強化、ブランド力の向上などを図る。

 

4社の中期経営計画には燃料油内需の維持・拡大策が抜け落ちている

 元売各社の経営環境認識、並びに、経営合理化策は妥当と思われます。そして、上述した経営合理化策を実施することで、収支の改善を図ることができると思われます。ただし、各社の経営合理化策には、石油事業の経営環境の改善を図るために重要な対策が抜け落ちていると考えています。それは、燃料油の内需を維持・拡大するための施策です。

私は、燃料油の内需が減少傾向で推移するは避けられないものの、減少ペースは石油業界の対応次第で大きく異なってくると考えています。そして、効果的な需要対策を打ち出せない状況が続くと、需要が短期間で大きく落ち込んでしまうリスクにさらされていると考えています。なぜなら、輸送用分野を除くほとんどの利用分野で、石油機器の老朽化が進んでいるからです。

石油化学製品への生産シフト、石油製品輸出の拡大には限界があります。需要の減少ペースを緩やかにすることができなければ、石油精製設備の能力をどれだけ削減しても、需要の減少によって、すぐに余剰設備を抱えるようになり、需給は緩み、市況が崩れやすくなってしまうと考えられます。もしも想定以上に石油製品の内需が減退してしまうと、生産・販売数量の減少、需給悪化による燃料油マージンの減少に苛まれて、収益が悪化してしまう可能性があります。石油販売業界を含めるとその影響はなおさら大きくなります。

2000年代に入って、原油・石油製品価格の高騰を背景に、石油機器の更新時に、ガス系あるいは電気系の機器やシステムに置き換えられてしまうケースが散見されるようになりました。エネルギー政策の見直しを機に、天然ガスの導入が一層推進される方針が示されていますので、この動きがさらに加速される可能性があります。

石油の供給安定性が優れていることは、大規模な自然災害や供給障害が発生するたびに証明されています。東日本大震災をきっかけに石油の重要性・有用性が再認識されたこのタイミングで、業界を挙げて、効率が高く、経済性・環境性に優れた新しい石油機器・システムへの更新、さらには、新規設備の導入・普及に取り組んで、燃料油需要の維持・拡大を図ることが必要なのではないでしょうか。

 

ブランド戦略の要は付加価値の拡大

一方、JXおよび東燃ゼネラル石油の計画の中に収益力の向上策としてブランド戦略の強化が掲げられています。具体策として、SSの新業態の展開やカード戦略の強化などが示されていますが、ブランド戦略でもっとも重要な対策、ブランドを付して販売している製品の付加価値を高めること、すなわち、石油業界では石油製品をより高く売れるようにすることです。ブランドを掲げたSSでブランドの価値をおとしめるような廉売が起きないようにすることは、石油販売部門において、すべての元売に一致して取り組んでいただきたい重要な戦略と考えられます。


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