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えっ、消費税還元セール禁止?
消費者は安値を支持、デフレ脱却は遠い道のり


 来年4月に消費税率の引き上げ(2014年4月に8%、2015年10月に10%)が予定されている。これに呼応して先月22日、企業が増税分を円滑に価格転嫁ができるようにする特別措置法案を閣議決定し、国会に提出した。簡単に言えば「消費税還元セール」という趣旨をうたい文句にする宣伝を禁止する法案で、今年10月の施行を目指している。今後、同法案に対する国会審議が行われ、政府の主張通り同法案を成立すれば、大手の仕入れ先など中小零細企業にとって、増税分や還元セールの負担分を回避できるのか?所得の上がらない庶民の味方である「消費税還元セール」が消滅するだけなのか?注視しなければならない。


 筆者がこの一報を聞いたとき、「えっ!価格統制?戦時中でもないのに日本は社会主義なの?」と率直に驚いた。そもそも「消費税還元セール」というものが世の中の小売店で散見されるようになったのは1997年の消費税が4%から5%に増税されて以降だ。その後、2004年4月、財務省および政府は国内小売価格の消費税表示を外税方式から内税方式に一本化した。やはり小売業者としては消費者に対し、税金分の転嫁を値上げと解釈されたくないのは当然のこと。さらに、消費税分を企業努力で還元する−という宣伝手法が消費者から支持された。当時、外税、内税の議論は賛否両論あったが、財務省にとって内税表示は国民の痛税感を和らげ、消費税の存在を目立たなくするメリットがあった。今回の「消費税還元セール」の議論もここに起因する。内税方式を徹底することで、消費者から消費税の存在を隠し、税金分を不明瞭にした。その結果、大手小売店に納入する中小零細業者に対する税金分の値引きや、消費者に対する消費税還元セールが横行した一因でもある。仮に、その時に外税に一本化、あるいは内税・外税の両方を認めていれば「消費税還元セール」という存在が今より影響力が少なく、規制する法案が閣議決定されることもなかっただろう。「消費税還元セール」を規制する法案よりも、小売価格と消費税を別々に明記するなど、政府も堂々と税金を徴収すべきだろう。今後、税率が8%に引き上げられた後、一年半後に10%になる見込み。その都度小売業界は消費者への転嫁をしなければならない。これらの要因を考慮すると、もう一度外税方式を検討する価値があるのではないか。


 この法案に対し、衣料品大手ファーストリテイリング社の柳井氏は2014年4月に予定されている消費税増税後も「ユニクロ」などの店頭価格を据え置きし、実質的な値下げを示唆。小売店大手のイオン岡田氏も価格転嫁を顧客が受け入れるか否か懐疑的であり、税率引き上げ後も価格を据え置く方針を示唆している。また、牛丼チェーン大手三社も並盛280円という安価で、顧客獲得が激化している。これらの企業がデフレ脱却から逆行するような方針を打ち出しているのは、大多数の国民所得が上がらないまま、円安や株価上昇といったアベノミクスのムードだけで値上げをした場合、必ず顧客が離れ売り上げが減少することを予知しているのである。その理由はアベノミクスの恩恵を受けているのは、輸出産業、株式や土地を所有する一部の富裕層など限定的である。多くの国民はアベノミクスの恩恵よりも、企業の競争により価格が低下することを歓迎しており、いわばデフレの恩恵によって生活が支えられてきたのである。


 今後、値上げを実施する企業と、価格据え置き・あるいは値下げ実施の企業の二極化が予想されるが、消費者の支持を得られるのは間違いなく後者であることは言うまでもない。

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