㈱伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリー 伊藤 敏憲


燃料サーチャージの普及を

伊藤 敏憲



 

燃料油の最大の価格変動要因は原油輸入価格


 原油の取引価格は、指標油種と呼ばれるWTI原油、ブレント原油、オマーン原油、ドバイ原油の先物市場での取引価格あるいはスポット価格に基づいて決定されています。原油先物価格は、需給、産油国の情勢、消費国の経済動向、為替レート、株式・他国際商品等の相場の影響を受ける。近年はドル・ユーロ為替レートと強い相関性がみられます。さらに原油輸入価格には、為替レート、船賃、保険料なども影響します。


 99年に1バレル10ドルだった原油価格は、段階的に価格水準を切り上げ、08年には140ドル台まで上昇。08年から09年に値崩れし、11年から昨年半ばまでは100~120ドルで推移していましたが、昨年8月から今年1月にかけて急落、8月には6年ぶりに約40ドルまで値を下げました。ところが、原油の需給は、シェールオイルの増産による北米の生産増、中国の需要の伸び悩みなどから13年の年初から緩んだ状態にあり、昨年半ば以降に大きく変化したわけではありません。昨年8月以降の原油安は、米国の金融緩和策変更を背景にしたドル高の影響を強く受けたと考えられるのです。このように、先物市場の拡大によって、原油の価格は、需給や経済性などファンダメンタルズに拠らず、短期間で大きく上げ下げするようになっているのです。


 

 原油輸入コストの変動は、燃料油のコストにそのまま影響します。現状では、原油価格が1バレル10ドル変動すると燃料油のコストは1リットル当たり約8円、為替が1ドル10円変動すると同3~4円増減します。燃料油の需給動向や石油各社の販売政策などを反映して利ザヤも変化しますが、原油価格が燃料油の最大の価格変動要因なのです。



 

燃料サーチャージの普及を


電力および都市ガス業界では、原油、LNG、LPG、石炭の価格や為替の変動によるコストの変分を一定期間後に料金に自動的に反映させるしくみ「燃料費(ガスは原料費)調整制度」が採用されています。空運業界でも、ジェット燃料油の価格変動を国際航空運賃に反映する燃油サーチャージのしくみが導入されています。これらの業界では、原油価格等の変動が収益に与える影響が抑制されていますので、燃料を供給している各社が、価格交渉に悩まされにくくなっています。


 しかし、燃料コストが収益に大きな影響を及ぼすようになっているにもかかわらず、陸運業界では、そのようなしくみが普及していません。私は、以下のような理由から、陸運業界でも軽油やガソリンなどの価格の変動を自動的に料金に反映する燃料サーチャージの導入を検討する必要があると考えています。


 原油価格の高騰で軽油などの価格が上昇し、燃料費の運送業者のコストに占める比率が高まっている。


 原油価格や為替レートが短期間で大きく変動するようになったため、燃料費の増減が運送業者の経営に大きな影響を及ぼすようになっている。


 個々の運送業者が、荷主や雇い主に対して燃料費の増加分の運賃への転嫁を求めることは難しいので、燃料サーチャージのしくみを導入すると経営が安定しやすくなる。


 石油業界の立場で見ても、原油や為替の変動による影響額を燃料価格に反映しやすくなる。


 

 なお、燃料サーチャージに限らず、新しいしくみを導入する際には、国の取引ルールや産業政策に符合しているかどうかを確認する必要があります。燃料サーチャージは、運送業者の経営安定性を高める効果が見込めますので、運輸行政的には好ましいしくみと思われますが、導入・普及時に公正取引ルールに適合するよう配慮する必要があります。具体的には、業界団体あるいは大手業者が、他産業の先例や有識者の意見を参考に燃料サーチャージのしくみを作り、国交省、公正取引委員会などに諮りながら導入を進める必要があると思われます。石油業界も協力して取り組む価値が十分あると思われます。



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